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~3つの柱で変革を実現~
NECの「社内DX」を紐解く

ウェビナー報告

ユナイテッド株式会社では、各業界でDXのトップランナーを取材しています。今回は、社内DXにおいて国内最先端の取り組みを行う日本電気株式会社(NEC)のオフィスに伺い、同社におけるDXの現在地を解説していただきました。同社の強みのひとつである「生体認証技術」を武器に様々な施策を実施されている同社の目指す姿を紐解きます。

顔認証をオフィス入館や食堂の決済に実装

関:御社は1993年から在宅勤務などの人事制度の導入を始め、2006年からはシンクライアントを中心にしたテレワーク環境を段階的に整備されるなど、かなり早い時期からデジタル化やDXに取り組まれています。2021年に「コーポレート・トランスフォーメーション変革プロジェクト」を打ち出されるなど、一段と取り組みを加速させている背景について教えていただけますか。

中田:NECが目指す「社会価値創造型企業」への変革の中で、DXは大きなポイントになると考えています。2025年中期経営計画の中で私たちはDXを「社内のDX」「お客様のDX」「社会のDX」と分けて経営の中核に据え、事業を広げていく形になっています。

NECグループには約12万人の社員がおりますので、社内のDXで実践したことは成功も失敗も大きな知見になります。まず社内がテストベッドとなることで、お客様のDXや社会のDXにも還元できると考えています。

<日本電気株式会社 コーポレートトランスフォーメーション部門 DX戦略統括オフィス シニアディレクター 中田 俊彦氏>
1991年NEC入社。入社以来、社内ITに関わる企画業務に従事。主にコラボレーション領域のNECグループ共通基盤、インフラ高度化の企画・構築を担当。18年より経営システム本部長として社内DX推進を統括。22年より現職。

関:今日オフィスにお伺いして、会議室への入室や、食堂の決済が顔認証で可能であることなど、先進的な取り組みがされていると感じました。これらは既にクライアント企業にも広がっているのでしょうか。

綿引:弊社が非常に力を入れ、業界きっての強みとなるのが「生体認証技術」です。社内で当たり前のように顔認証を使い、自ら体感したことをお客様にきちんとご説明できるように、まずは本社を中心に導入し、グループ会社にも広げていく方針です。もちろんお客様へのご提供も並行して行っています。また、オフィスだけでなく、リモートワーク時にPCへのログインを顔認証でできる仕組みも導入しようとしているところです。

<日本電気株式会社 コーポレートトランスフォーメーション部門 DX戦略統括オフィス 上席プロフェッショナル 綿引 征子氏>
2020年にNECへキャリア入社。外資系企業や日系企業、主に金融業界にてIT案件のプログラム及びプロジェクト
マネジメントに従事。NECが取り組んでいるコーポレートトランスフォーメーション(CX)において、社内DX推進を担当。また、NECの働き方改革であるSmart Work 2.0では、働き方のDXに必要なテクノロジーの浸透・活用促進をリード。

NECの社内DXを支える3つの柱と3つの横軸

関:社内で自社のコア技術を活用した様々なトライをして、そこでインキュベートしたものを横展開するという方針は、御社ならではの強みですね。社内DXについて、もう少し詳しく教えていただけますか。

中田:社内DXは、「働き方のDX」「基幹業務のDX」「運用のDX」という3つの柱で考えています。

「働き方のDX」とは、今申し上げた顔認証も含め、デジタルワークプレイスを創っていくことです。「基幹業務のDX」は、SAPとパートナーシップを組んで基幹業務そのものをデータドリブン経営に変革していくこと。「運用のDX」は、社内システムの運用や間接業務に多いマニュアル作業を自動化・効率化して、人が本来やるべきことにフォーカスできるようにすることです。

さらにこれらを横軸で支えるものとして、「エクスペリエンス」「One DATAプラットフォーム」「モダナイゼーション」という3つを置いています。

関:全体としてハード面の打ち手が並んでいるように見えますが、ソフト面への取り組みはどのように行っているのでしょうか。

綿引:ソフト面も強く意識しながらDXを進めています。特に人材マネジメントは大切にしており、研修・トレーニングやコミュニケーションに注力しています。

中田:元々、働き方の改革の文脈で、DX人材をどう採用・育成していくかは考えてきました。「目指したい働き方」に向かって、ソフト面とハード面の両面から方針を考え、ITを使って施策に落としています。

お客様のDXを支援するにあたっても、ツールを入れるだけではなく、それを全員が使いこなせるよういかに啓発していくかといったことは、社内で実践していかないと語れません。これは重要ポイントとして取り組んでいます。

お客様への展開を見据えた社内トライアル

関:ありがとうございます。まず「働き方のDX」として、デジタルワークプレイスを創っていくにあたって取り組まれていることを教えていただけますでしょうか?

綿引:「働き方のDX」においては、「Smart Work 2.0」という全社プログラムを進めています。これは、従業員一人ひとりや、チームのパフォーマンスを最大化するために、環境面からサポートをする取り組みです。パフォーマンスを最大化するためには当然、デジタルだけではダメで、人事制度などの面とオフィスという場も重要です。

我々が方針とする「ハイブリッドワーク」においては、リアルとリモートを臨場感をもってつないでいくことをポイントと捉え、オフィスにいる人とリモートの人がバーチャル空間で一体感を得られるように工夫しています。

関:まさにオンラインとオフラインをマージするということですね。

綿引:今トライアル中ではありますが、遠隔地の事業所とも臨場感を持って話したいということで、等身大サイズのスクリーンを置いて話をしたり、社員証をスマホに入れ込んだ上でいろいろなサービスと連携できるようにしたり。我々の強みである生体認証とデバイスをつないだ世界の実現を進めようとしています。

AIやデータ活用等で、より個人やチームが働きがいを高めていける「ウェルビーイング」に寄与する仕組みや環境の構築も目指しています。それにはオフィスも大事なので、オフィスのリノベーションも進行中です。我々IT部門は、そのオフィスにデジタルテクノロジーを組み込んでより進化させることをミッションに据えています。

関:デジタルワークプレイスにおいてはリモートで生産性を高くすることと、物理的に会うことの”ハイブリッド”がポイントになってくるという中で具体的にいろいろな取り組みを進められていて勉強になります。

<ユナイテッド株式会社 DXソリューション本部 本部長 関 彩氏>
京都大学大学院農学研究科卒業後、2009年ベイン・アンド・カンパニー新卒入社。全社成長戦略の立案や複数のM&A案件、新規事業創出案件などに取り組む。2015年株式会社ビューティーエクスペリエンス(現 株式会社b-ex)入社。経営企画部長として従事。2020年ユナイテッド株式会社入社。事業戦略部長、人材開発部部長を経て、2022年4月からDXソリューション本部 本部長。

中田:制度やルール、職場環境を通して、多様なメンバーへの機会を提供することは、優秀な人材に当社で働き続けていただくためにも重要だと考えています。IT部門はそれをしっかり支えていく役割です。

関:続いて「基幹業務のDX」について伺います。これは横軸の1つである「One DATAプラットフォーム」と密接に関係があるところでしょうか。

中田:そうですね。「基幹業務のDX」においては、各セクションにあるデータをどんどんベースレジストリに貯めていきます。その上で、いろいろなビジネスプロセスをきちんと定義し、紐付けをして、ダッシュボードを基に意思決定を行います。これが、我々が目指す「データドリブン経営」の姿です。

関:ベースとなるデータ作成や可視化は、「誰が行うか」というところに難しさがあると思います。事業部門の1人だけではできないですし、かといってIT部門が業務を知らないまま行うわけにもいかない。御社では、どのように進めていらっしゃるのでしょうか?

中田:IT部門だけではダメだというのはおっしゃる通りです。当社でも、サイロ化していてデータが上手く拾えなかったことや、社内のルール、ITの仕組み、あるいはデータをつくる人のマインドが障壁になることがありました。その中でも「こういう世界にしていきたい」という大きな画を描き共有することで、「One DATAプラットフォーム」を実現しようとしています。

もう1つは、データドリブン経営を推進するガバナンス母体の強化です。コーポレートトランスフォーメーション部門の中に、データマネジメントオフィスというデータのガバナンスを司る部門を設置し、社内のあらゆる機能や事業領域をデータマネジメントで支える旗振り役としています。

経営幹部から私のような統括部長、さらには現場など様々なレベルで、何が見えるといいのか、何をすればいいのかを考え、それぞれ草の根的にデータマネジメントを進めてもらうように支える機能を持ちます。

DXの要諦は小さな成功を積み重ねること

関:「草の根」とおっしゃいましたが、御社の場合、散在しているデータを1か所に集めるという取り組みを草の根的に行っているイメージでしょうか?それともその一歩先で、データが既に基幹システムに入った状態で、そこからの活用を草の根的に進めるということなのでしょうか。

中田:並行で行っています。自社内でも、基幹システムに入っているデータもあれば、マーケティングデータはSalesforceにあるなど、散在している部分がありますので、それを集め、AIを駆使しながら可視化しています。また、データ活用においては、いきなり壮大なことをしようとせずに、小さく成功を積み重ねていくことを重視しています。

綿引:お客様とお話していても、そこが最も共感していただけるポイントです。すべてのデータを集めて活用するとなるとあまりにも壮大なので「膨大な時間とお金がかかる」と考えて思考停止に陥ってしまいがちです。それを一歩一歩、小さいところから実践しましょうとご説明すると、ご納得いただけることが多いです。

関:ありがとうございます。続いて「運用のDX」について伺いますが、ここでいう「運用」は具体的には何を指すのでしょうか?

中田:例えば、コーポレート部門では、いろいろな間接業務の仕組みがバラバラに存在しています。それをITの観点から1つのポータルに集約し、ワンストップで管理できる状態にしていきます。すると、そこにナレッジやデータがたまり、いろいろな業務改善につなげていくことができます。

従業員から見ると、いろいろなナレッジがどんどん公開されていくので、コーポレート部門に問い合わせなくても自分で解決できるようになっていきます。これが従業員目線での「運用のDX」です。

もう1つ、システム運用目線からの運用のDXもあります。現在、いろいろなシステム運用を人手に頼っているため、自動化や効率化することで工数を減らし、空いたリソースを他のところに回すことを目指します。従業員目線とシステム運用目線、この2つを包含して「運用のDX」と読んでいます。

関:最後に、社内DXを進めていった先のゴールの絵姿を教えてください。

中田:働き方のDXが一番わかりやすいと思いますが、常にワクワクしたり、人と人とが刺激し合ったりして、どんどんチャレンジしていける会社になってほしいと考えています。

綿引:決められたことだけをするのではなく、1日8時間を費やす業務の中で、いかに仕事を創っていけるか。そんな視点で、時間の確保やマインドセットを後押しする環境をつくっていければと思います。