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データドリブンで考えるマーケティング改革

ウェビナー報告

近年「DX」という単語が急速に普及しましたが、DXの定義は会社によって捉え方が異なり、多くの企業ではITを進化させることが目的となってしまい、巨額を投資したにもかかわらず根本的なトランスフォーメーションを実現できないケースが見受けられます。

本ウェビナーでは、グローバルを舞台に多くのDX戦略/マーケティング戦略を実行してきた元ゴディバCDO(最高デジタル責任者)で株式会社MJ 代表取締役社長の宮野淳子氏をお招きし、ご自身の経験をもとに解説していただきました。

※本レポートはウェビナーの内容を一部抜粋して掲載しております

登壇者紹介

<株式会社MJ 代表取締役社長 宮野 淳子>
オーストラリア ロイヤルメルボルン⼯科⼤学⼤学院卒業後、世界No.1化粧品ブランドであるロレアル パリの⽇本⽴ち上げ要員として、⽇本ロレアルに⼊社。ダイレクトマーケティング・CRM・デジタルマーケティングを統括し、DX推進を経て、カテゴリー売上シェアNo.1など実績を残す。その後アマゾン ジャパンに転⾝し、ソーシャルマーケティング及び、ファッション事業部のマーケティングを統括、⽇本発のソーシャルオートメーションモデル構築後、ジョンソン・エンド・ジョンソンに移籍。オムニチャネル・デジタルトランスフォーメーション推進部⾨統括、世界初のプリシジョンマーケティングモデルの構築などを経て、ゴディバジャパンChief Digital Officer 兼 マーケティングコミュニケーション & デジタル / ITトランスフォーメーション統括本部⻑に就任。マーケティング・ビジネスモデルの変⾰を実⾏し業績を残した後、株式会社MJを設⽴。現在では複数企業のマーケティング⽴ち上げ・DX⽴ち上げ・成⻑戦略・新規ビジネス構築に携わる。テクノロジーカンパニーのアドバイザー・講師・スピーカーを通じて⼈材育成活動にも積極的に従事する。

<ユナイテッド株式会社 執行役員 事業戦略担当 米田 吉宏>
慶應義塾大学経済学部卒業後、 2010年株式会社電通入社。2013年ボストン コンサルティング グループ入社後、主に通信・メディア・テクノロジー領域の経営戦略策定、新規事業開発、営業戦略、組織戦略等を担当。プロジェクトリーダーとして従事した後、2019年3月ユナイテッド株式会社執行役員に就任(現任)。DXソリューションの立案/推進と、全社戦略/組織強化を担当。

マーケティングにおける現在の課題

宮野 淳子(以下、宮野):インターネットが身近になり流通情報量が増加しており、マーケティング担当者は1消費者のニーズに合った情報提供を行い、認知してもらうことがとても重要です。そのためにデジタル化はマーケティングにおいて重要なテーマです。

はじめに、デジタルをうまく活用せず、最終的に経営破綻に至った企業の事例を挙げます。

海外に拠点を置くファストファッションチェーン店。この会社は早い段階からECを手掛けていましたが、経営破綻をしました。なぜこのような事態に至ったのでしょうか。

ブランドが設定していたターゲット層は10代後半の女性だったのですが、購入データを見たところ、実際に商品を購入している主な年齢層は40代後半であるということが分かったようです。つまり、目指しているブランドコンセプトと消費者のニーズに「ギャップ」が生まれていたと推測されます。このギャップが生まれていることをもっと早く理解して自社を改善・改革できていたら経営破綻にならなかった可能性もあります。

消費者の理解不足は、ともすると起こりがちなのです。消費者ニーズの変化するスピードが非常に高まっているからです。今の時代は、単なる商品の販売から、「共感を生むエクスペリエンス提供者」になることが求められます。消費者に覚えてもらう情報を提供するためには、「共感」が必要です。消費者一人ひとりのタイミングに合わせて共感を生むからこそ消費者の態度変容が起こり、購買につながります。

購買へと消費者の心を動かすために必要なことは四つあります。

一つ目はモノからコトへの転換。単なる販売から、体験を与え、つながっていくこと。

二つ目は共感を得ること。

三つ目は顧客の課題解決をサポートすること。例えば、大量生産によって生産国が劣悪な労働環境になっていることは、ミレニアル世代にとっては強い問題意識を持ちます。このような課題に対して真摯に向き合い、解決していくことも重要です。

四つ目は応援をすること。企業を通じて新しい生活スタイルの応援・支援することも心を動かす上で大切です。

消費者の心を動かすためには、上記の四点を目的として、ブランドの存在意義・専門性・資産を築き上げ、消費者に寄り添うために必要な変化を繰り返す必要があります。

そのために不可欠なのは、DXされたマーケティングを行うこと。DXされたマーケティングとは4Rを完成させるマーケティングです。4Rとは、Right Target(最適な相手に)、Right Timing(最適なタイミングで)、Right Content(最適な内容を)、Right Channel(最適な チャネルで) のことです。これらを完成させることがマーケティングにおけるDXだと考えています。

DXとはなにか

私が考える「DXとはなにか」についてお話したいと思います。

私はDXとは、「経営戦略」であると考えています

経営戦略とは、「何があると会社が成長するのか」という道筋に対して行うものです。その中で、DXが必要であればやるべきだと考えます。

私に「DXをしたいです」とご相談いただいた場合、本当にDXをやることが企業の成長につながるかをまず検討します。DXの前に、課題の整理や、自社・消費者への理解が必要だと思う場合は、そちらを先に支援します。その後、DXを行うべきか判断する、という形で支援させていただくケースが多いです。

市場理解やブランド理解、商品企画といったさまざまな仕事が社内にある中で、これら全てが連携していないと、DXによる最適化はできません。そのため、自社をきちんと理解し、会社が一丸となってDXによる最適化を望んでいく組織体制も必要です。

DXという言葉は非常に流行っており、さまざまな企業が集中して取り組んでいると思います。しかし、本当に会社にとって必要であるのか、本当に利益を生む取り組みかということを念頭に置いて、取り組んでいくと良いのではないかと考えております。

参加者の皆さまからの質問

米田:続いて、パネルディスカッションに入ります。宮野さんはさまざまな企業にハンズオンで入られて変革を促進されているとお聞きしました。そんな中で、クライアントが大企業かつ歴史の古い会社であると、システムや文化、社員の意識を変えるのは難しいのではないかとに思っております。このような課題をどのように乗り越えるか、アドバイスがあれば教えていただきたいです。

宮野:おっしゃるとおりです。大きな会社になると部門が縦割りに分かれ、その中でのヒエラルキーもあります。また内部の方が変革を推し進めようとすると、周りから強い反発がくることもよくあります。このような場合、外部の人間が入ってお話しすることで、話を聞いてくれるケースがあると感じています。もし外部のコンサルタントを入れることが可能であれば、内部だけでやろうとするのではなく、他社に入ってもらった方が変革を促しやすいと考えております。このような外部人材を活用した上で、DX部門などが上手く推進していく、という形は成功パターンだと思います。

米田:次にショッパーセグメントについての質問です。ショッパーセグメントの中で、ロイヤルカスタマーに成長させる際の順序や優先順位があれば教えて下さい。

宮野:それは会社が持っている商材やブランドによって異なります。まずは消費者調査を行うことが必要です。リサーチ会社にきちんと伝えればショッパーセグメントに分けられるようなリサーチを行ってもらえると思います。そのセグメントの中で、「最も定着率が高い」層がロイヤルカスタマーに成長させやすいと言えます。もし消費者調査ができないようでしたら、自社の持っているデータで大まかなセグメント分けを行い、実際に施策を実行して判断すると良いでしょう。施策による定着率の差や、セグメントによるアベレージバスケットの差がどれだけ現れるかを分析して、ロイヤルカスタマーになりうるセグメントを見つけていくのが良いと思います。

米田:ショッパーセグメントの中では、ペルソナをどの程度細かく設定されると良いのかをお聞かせください。

宮野:数が多くても管理ができず、実際の施策に落とし込むことができません。そのため、4〜5程度のセグメントに分けることが良いと経験上は思います。

米田:特定のターゲットに対して施策を打つ際に、具体的にどのような考え方でチャネル戦略などのアプローチを考えるのでしょうか?

宮野:例えば、消費者の中でも「常にオフラインで店員と話し合って購買をしたい人」と「最初だけオフラインで購買して、その後はオンラインで手軽に購買したい人」といったセグメントが存在します。こういったニーズは事前にアンケートを実施することで把握することができます。そのニーズに刺さるマーケティングやCRMを行う事によって効果的な施策を打つことができます。このように、自社データだけでなくアンケートを積極的に取り、これらの情報を組み合わせることによってPDCAをより効率的に回せると考えています。

米田:実際のクライアントでは、やるべきことや論理は理解をしているが、実際、実行に移せない企業が多く存在していると思います。このような場合、実際に行動を起こせるようにするにはどういった工夫をすればよいのでしょうか?

宮野:外部の人のエキスパートを活用しながら、企業の内部人材を育成することを第一に行うと良いと思います。「DXを進めたいから組織を作りたいです、そのために人材を外から集めましょう」といったご相談を受けたことは実際にあります。しかし、DXを推進できる人材を多く集めることは現在の日本では非常に困難です。そのため、社内人材を活用して組織を作り、外部のエキスパートとともに勉強をしていくのが良いと思います。私が現在支援している企業も、約1年間かけてマーケティングとDXについて学んできました。これが2年、3年と経過していくと自走できる組織が構築され、自社での実行が可能になると考えております。

米田:本日は貴重なお話をありがとうございました。