2021年9月14日の日本経済新聞において、メルカリの時価総額が初の1兆円を突破したと報道されました。また、2021年6月期は売上高1000億円を突破し、メルカリはさらなる進化を続けています。今回は2020年8月にもご登壇いただいた、メルカリ取締役会長の小泉氏を再度お招きし、メルカリの成長戦略についてお話いただきました。パートナー企業と新たな「売買」体験の提供や膨大な2次流通データから見いだす新ビジネスについて、最新の情報をお届けします。
会社紹介

<株式会社メルカリ 取締役会長 小泉文明氏>
1980年9月26日山梨県北杜市生まれ。早稲田大学商学部卒業後、大和証券SMBCにてミクシィやDeNAなどのネット企業のIPOを担当。2006年よりミクシィにジョインし、取締役執行役員CFOとしてコーポレート部門全体を統轄する。2012年に退任後はいくつかのスタートアップを支援し、2013年12月株式会社メルカリに参画。2014年3月取締役就任、2017年4月取締役社長兼COO就任、2019年9月取締役President (会長)就任。2019年8月より株式会社鹿島アントラーズ・エフ・シー代表取締役社長兼任。
小泉文明(以下、小泉):メルカリはフリマアプリとして設立から8年を迎え、その他の事業もメルペイ(金融関連事業)だけでなく、最近ではメルコイン(ブロックチェーン関連)やメルロジ(物流関連)など、更なる事業展開を進めているところです。ミッションは「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」としており、グローバルを意識しております。“価値”をキーとして、誰かにとって価値のないものが誰かにとっては価値があると考え、まずは個人間での売買をするフリマアプリ事業を中心に展開しています。売上げは昨年度に1,000億を超え、多くの皆さまにご利用いただいています。約2,000万人の方が毎月アクティブに利用している状況です。
メルカリの特徴ですが一つは「つかいやすさ」で、最近では簡単に配送ができる「メルカリ便」や簡単に出品ができる「AI出品、バーコード出品」に注力をしています。特に配送に関しては、お客さまのボトルネックとなっていて、今回メルロジを設立した背景でもあります。ロジスティクスに関しては、ある程度自分たちでハンドリングをしていかないとお客さま体験が上がらないと感じています。出品のほうでは、商品バーコードを読み取ると自動的に商品が表示され、説明文が記入される機能や、画像認識を使ったAIの出品機能など、ソリューションで出品の手間を省くことをしています。

また、さらなる利便性を追求し、リアルな場所でのソリューションも強化をしていて、例えば商品発送の代行や、自社で無人投函ボックスを設置しています。その他、ゆうパケットでの発送もお客さまがシールを貼りポストへ直接投函できる仕組みも作りました。
ペイメント事業もおかげさまで、利用者が1,000万人を超えました。メルカリで売却したお金を、メルペイを通じてメルカリ以外での購入につながるサイクルが生まれています。ですので、メルペイとメルカリで1次流通と2次流通を回していき、ここにデータが蓄積されることが肝になってくるかと思います。

蓄積されたデータを活用して、一括払いや定額払いなどの与信事業を行っています。

メルカリ創業翌年の2014年からアメリカでも事業を始めており、動向に波はありますが、こちらも右肩上がりで成長を続けています。MAUですと500万人近くのお客様にご利用をいただいています。新型コロナウイルスの影響を受けましたが、大きな打撃はなく月間の流通も100億円を超えている状況です。日本、アメリカ共に順調に伸びている状況です。

最近では子会社の「ソウゾウ」がEC事業を始めました。今は簡単にEコマースを始められるプラットフォームが出てきていますが、ネットショップの開設が難しいと感じる方がまだ多く、立上げ後のマーケティングの難しさといった課題も抱えている方がまだまだいらっしゃいます。ですので、メルカリの中に事業者向けのショップを設け、メルカリのお客さまに向けて商品を売ることができる「メルカリShops」を始めました。スマホ一台で、メルカリと同じUXでショップをとても簡単に立ち上げることができ、2,000万人のメルカリのお客さまに売れることが特徴となります。今後もお客さまに対してさまざまな商品を売買できるきっかけ作りをしていき、成長していけたらと考えております。
対談、参加者の皆様からのご質問

<ユナイテッド株式会社 執行役員 事業戦略担当 米田 吉宏>
慶應義塾大学経済学部卒業後、 2010年株式会社電通入社。2013年ボストン コンサルティング グループ入社後、主に通信・メディア・テクノロジー領域の経営戦略策定、新規事業開発、営業戦略、組織戦略等を担当。プロジェクトリーダーとして従事した後、2019年3月ユナイテッド株式会社執行役員に就任(現任)。DXソリューションの立案/推進と、全社戦略/組織強化を担当。
米田吉宏(以下、米田):2回目のご登壇ありがとうございます。以前のご登壇では非常に反響が大きかったので、今回2回目のご登壇を依頼させていただきました。本日は、メルカリが今後どのように進化されていくのかについて伺っていきたいと思います。
オンラインで完結していたメルカリサービスが、リアル店舗である「メルカリステーション」を展開するに至った背景は何か
米田:それではまず私から質問です。デジタルサービスを提供しているプレイヤーの皆さまがオフラインの店舗やオンラインと連携して、よりマーケティング戦略を進化させようという動きがあると感じています。そのような中、メルカリステーションの取り組みも含め相通じるものがあると理解しました。直近ですとMAU2,000万人弱、GMV2,000億円到達されているということで、今後どのようにマーケティング的な成長を目指すのか、その際にオフラインをどのように活用しているのかお聞かせください。
小泉:私たちは2013年にサービスをローンチしましたが、当時はスマホアプリが出始めたばかりでユーザーは若年層が多く、マーケティングはオンラインを中心に翌年テレビCMを打ち、20代~30代をターゲットにマーケティング活動をしてきました。
そのような中、利用者の年齢層が40代~60代と徐々に広がるも、ITリテラシーの問題で、「メルカリを知ってはいるが利用していない人」が増えてきました。お客さまの声を聞くと、「なんとなく面倒くさい」や「よく分からない」といったオンラインだけでは刈り取れない層が出てきたというわけです。
その課題に対して試したのは、一度リアルな場所で体験してもらう、ということ。テストの結果、先ほど申し上げた課題を払拭でき、1、2回利用した人たちの継続利用率が非常に高くなりました。ですので、まずは初めての利用のハードルをどれだけ下げるのかという課題をクリアすべく、リアルな場所でメルカリ教室を開催して使い方を伝えました。年配の方だけでなく20代、30代の方でさえ、スマートフォンをあまり使っていないが家には売りたいものがある、という方が多くいらっしゃいました。そこをうまく救う形でリアルが広がってきたという状況です。
また、もう一つリアルの切り口として配送の面の問題があります。もともとメルカリ便の設計を私がしていましたが、自分がメルカリを使う際に三つほど課題があると感じていました。
一つ目は相手に住所や名前を知られたくない、二つ目は送料が明確でないと値決めができない、三つ目は配送の持込み先がクロネコヤマトや郵便局だけでは利便性が低い環境にある人も多く、コンビニで出したいという課題です。いちユーザーとして自分のペインが大きかったので、この三つをクリアしようとクロネコヤマトにメルカリ便の提案を持っていき、データベースの統合で匿名配送を可能にしたり、全国一律料金を可能にしたりすることができました。
現在は、コンビニでの引受量が増え、配送のキャパシティにも限界がきているなかで、ライフスタイルの変化に伴ってさらなる配送の課題が出てきています。そこで、もう少し踏み込んだところとして、メルカリポストとして無人投函ボックスの設置を進めていますが、今後は梱包の問題も含め、配送面での課題をクリアし簡単に出品できるようにしていきたいと考えています。
今はクリック一つで簡単に物を買える時代ですので、メルカリでの出品もそのくらい簡単にできるようにすることが目標です。ですので、お客様に対するプロダクトの一連の体験をスムーズにしていくことで、課題を一つずつクリアしていきます。
米田:ありがとうございます。まず認知から利用のところにギャップがあり、初回利用促進のためにメルカリステーションを設置されたとのことですが、どうしても来店すること自体がボトルネックになるのではないかと思います。来店のハードルを下げ、実際に体験してもらうことをどのように促していくのか、そのあたりのお考えをお聞かせください。
小泉:もともと目的は二つありました。
一つはスポット的にオフラインで体験してもらうこと。オフライン体験以降の継続率が高いというデータが取れているからです。
二つ目はショーケースにすること。拠点があると、そこがショーケースのようになり認知度もあがりますし、横展開がしやすくなっています。拠点で事例を見せることの大切さがメルカリステーションを始めたきっかけでもあるのですが、おかげさまでメディアにも多く取り上げられ、docomoショップでメルカリ教室を開催したり、テレビの終活特集にメルカリが取り上げられたりするなど、来店のきっかけがそこにあったりもしますので、メルカリステーションの存在の意味はあると思っています。
米田:テレビの特集で取り上げられると、広告とは違った形での行動に波及するメカニズムもあると思いますので、メディアで取り上げられることは非常に貴重な機会となりますね。
小泉:そうですね。テレビCMだけでは限界を感じていますので、どうすればまとまった時間のPRができるのか、そこが可能になれば説明することで課題を払拭することができるかと思うので、そこは常に考えているところです。
米田:先ほどのお話の中で、メルカリステーションを利用されている方ですと、もともとの仮説では年齢による差が大きいのではないかということだったかと思いますが、実際はITリテラシーの問題のほうが大きかったとのことでした。やはり操作に自信のない方は、オフラインのほうが理解しやすいのでしょうか。
小泉:そうですね。興味はあるが始めるきっかけがない方が多いかもしれませんので、メルカリステーションを見て「寄ってみようかな」という気軽な気持ちで実際に使ってもらうことが良いと感じています。実際にお客様からは「思っていたより簡単だ」という意見もあるので、自分たちとしては口コミで広がっていくことも大切だと思っています。「私にもできた!」というように口コミで広がっていくと、バイラルしていきますので、それも含めリアルの重要さというものを痛感しています。
米田:ありがとうございます。次に配送の課題についてもお伺いします。先ほどコンビニの物量の8割がメルカリが占めているとのお話でした。小泉さんの実体験のペインから「らくらくメルカリ便」を出されて、今回新しい会社でもロジスティックスの事業を立ち上げられたことは、ユーザーのペインをより解消していくということなのか、それとも物量の解消も含めての取り組みなのか、そのあたりはいかがでしょうか。
小泉:どちらもになります。お客様にアンケートを取るとまだ知って入るけど使っていない層が多く、今後MAU4,000万人近くの方に使ってもらえるのではないかとポテンシャルを感じています。実際に利用している自分でさえ、配送面をもっと楽にできないかと感じる部分もありますので、ユーザー目線でやっていくというところではあります。
事業が拡大していく過程で、インターネット企業だからインターネットに関するところだけやればよい、という考えではなく、リアルなところのペインを解決していかないとお客さまは増えていかないと感じています。全てがインターネットで完結することは少ないと思います。リアルのボトルネックを解消するソリューションを提供していかなければなりません。創業時からリアルな部分もしっかりやっていくという考えのもとサービスを取り組んできた経緯があります。
米田:ありがとうございます。関連したご質問を参加者の方からいただいております。
ーフリマアプリの競争環境が激化していると思いますが、そのような中で勝ち抜くための戦略や差別化、大事にされていることを教えてください。
小泉:簡単に出品できて売れること、だと思います。
自分たちの在庫数確保という意味でも、出品の手間を少なくして出品数を増やさないと数を確保できませんし、売り上げのポテンシャルも上がっていきません。ですので、先ほど申し上げた、AI出品や物流面を徹底的に磨き込み、出品のハードルを下げることと、売れることについては、検索結果や興味・関心の部分でいかにマッチング率を上げるかにはAIが必要ですので、そこに対して人材をかなり割いています。
また、これまでの取引データや決済データがあると、購入するお客様に与信を提供できますのでペイメントも含めて、売買しやすい環境をつくることが大事だと考えています。メルカリで購入した商品を使わなくなった時も、またメルカリで売ってもらい、その資金でまた購入してもらえるような循環ができれば、お客様もわれわれも満足できるのではないかと思います。
米田:ありがとうございます。2021年7月頃に商品のメタデータ化を強化すると発表されていたかと思いますが、そちらも出品者と消費者のしっかりとつなげるための施策になりますか。
小泉:そうですね。やはりデータをきれいに整えていくことにより、出品・検索をはじめ、他所にも良い影響が出てくると思いますので、今後はそのデータを活用することが、金融事業もそうですが、非常に肝になってくるかと思います。
米田:確かにそうですよね。ありがとうございます。データ領域に関して、各業界や各領域で重要視されていると思うのですが、戦略を考えていくうえで重要なポイントや注意すべきことがあれば教えていただけますか。
小泉:集まったデータを自社の競争戦略や収益化にどう活かすかが重要です。われわれですとそこがペイメントの与信事業に活かされています。ですので、データを集めてどうする、というよりは、戦略がある中でデータを集めるということが重要です。
将来的な流通面では、2次流通のデータを1次流通の人にフィードバックしていくことが大切だと考えていています。例えば1次流通の事業者が今年のトレンドは「赤」だと決めてマーケティングしていても、2次流通を見たら実は「黄色」が売れていた、ということもありますので、2次流通のデータの方が実事を表していることが多かったりもします。ですので、2次流通のデータを1次流通のマーケティング活動や在庫、プライシング等に活かしてもらうことにより、1次流通の方の経営をバックアップでき、無駄な物を作らないようにするなど、今後は事業展開をしていけたらよいのではないかと思っています。
米田:ありがとうございます。われわれがコンサルティング支援をする中でも、最初に「何を実現しようか」を考える前に、「どうデータ統合をするか」「社内データをどのように一元管理しようか」といったデータの基盤や統合の仕方に目を向けてしまいがちな企業が多いと感じています。ですので小泉様のお話を聞いていると、自社の成長のために磨き込むべきポイントが決まっているが故にデータの活用方法や外側のプラットフォームの将来をきちんと設計できているのが重要なポイントだと感じました。では次の質問に移ります。
メルカリの今後の展望

ー小泉様が10年後に理想とする会社の社会的なポジションは、どのようなものでしょうか。また個人としてどのようなことを目指していかれるのかも教えてください。
小泉:会社はミッションを実現するために存在していると思っていますので、10年単位でいくとグローバル展開ですね。
われわれは世界的なマーケットプレイスを作っていくことがミッションで、現在はアメリカ展開はしていますが、それ以外の国もどう参入していくかを考えています。将来的には国を超えたグローバルで価値の遍在を最適化していきたいと思っています。
現在は、日本・アメリカ共に国内に閉じたままですが、10年後は配送コスト等が変わってくると思いますので、Amazonが世界的なECのプラットフォームとしてあるように、われわれは個人間売買の代表的なプラットフォームになりたいと考えています。“売る”ということを空気のように簡単にしていきたいです。
循環型社会では、もっとリアルをもっと絡めていかないといけませんので、事業フィールドが広がっていく可能性もあると思っています。まちづくりを含め、例えばエネルギー問題など、循環型社会を作るために、実験しながら進めていきたいと考えています。メルカリはアプリのサービスベースで循環型社会を作っていますが、街というプラットフォームから循環型社会というのはどうしたらできるのか、それぞれのやり方でサスティナブルな社会を描いてきたいと思っています。
米田:非常によく分かりました。ありがとうございます。関連するご質問もいただいております。
ーアメリカ以外の海外進出の予定や、魅力的な地域があれば教えてください。
小泉:われわれのサービスは物流と決済が整っていないと難しいので、それらが整った国というのが条件となってきます。まずは北米、ヨーロッパのような、ある程度経済が成熟していて、物流と決済が行き届いていることが優先順位としては高くなると考えています。
アジア内では、新品が欲しいという方たちもまだ多く、2次流通でクオリティの高いものが出てくるかというと、まだ早い気がしてします。一方でテスト的に日本の物を台湾や中国の人がメルカリで購入することができるというような試みは始めていますので、将来的にアジア進出もしたいのですが、まずは北米、ヨーロッパあたりが優先かと思います。
米田:ありがとうございます。続いて海外進出に付随したご質問です。
ー日本とアメリカでマーケティング戦略の違いを教えてください。
小泉:アメリカでは当初日本と同じUI、物流や決済は現地の業者にお任せしてスタートをしました。
ところがアメリカは人種やバックグラウンドが多様ですので、日本のように一つの価値観でマーケティングはできませんでした。アメリカではテレビCMで全ての人に情報を届けることは難しいため、二つのアプローチをしました。
一つ目はロゴやUI、UXをどんなバックグラウンドの方でも使えるようにかなりシンプルなものにしました。
二つ目はオンラインを中心に“売るアプリ”ということを前面に押し出したマーケティング戦略をしています。
アメリカでは購入のためのECサイトの数は非常に多いですので、ポジション確立のため“売る”ことに特化したマーケティング戦略をしています。これまでアメリカは、どちらかというと日本のジモティーのようなローカルで直接会って取引をするケースが多かったのですが、コロナ禍で直接会うことを控える動きがあり、われわれのような郵送型が伸び、追い風の影響を受けています。
米田:ありがとうございます。それでは次の質問に移ります。
ー海外ユーザーにフィットするためのアプリのUI、UXをどのようにされているのか教えてください。
小泉:使い方を見なくても理解できるようなシンプルな作りになっています。
膨大な2次流通データから見いだす新ビジネスとして、どのようなビジネスを想定しているか
米田:ありがとうございます。次に私が着目した部分からご質問をさせてください。1次流通と2次流通をデータで融合させ連携していくような循環型社会の実現、例えば不要な物が作られなくなったり、プラットフォームの成長にもつながることかと思いますが、この領域の可能性をどのように感じて取り組んでいらっしゃるのか教えてください。
小泉:2次流通は、個人間のマッチングというところで事業者のハンドリングができないところで売買されていて、個人としては実態を反映していると思っています。このデータを私たちだけで閉じずに、なるべく1次流通のマーケティング活動に活かせるようにしていきたいと考えています。それによりお互いがウィンウィンの関係になれることが理想です。
あとは先ほども申し上げた金融事業になりますが、2次流通を含めさまざまな“モノ”と“お金”の流通が見えてくると、これまで与信が与えられなかった主婦の方や学生の方にも与えられる可能性がでてき、消費や売買の活性化につながるかと思っています。このあたりはうまくデータ活用をしていきたいです。
米田:そうした方針の中でアイスタイル、丸井との協業でさまざまな取り組みをされていると感じています。実際のパートナー企業からの反応はいかがでしょうか。
小泉:まだスタートしたばかりですので大きなインパクトになってはいませんが、これからデータの精度が上がっていくとパートナー企業の製品開発などにも活かせると思っています。これから事例を作っていくフェーズになりますので、お互いがウィンウィンになれる顧客体験を作ることが大切かと思います。
米田:では次の質問に移ります。
ー小泉様が戦略を考えるうえで、ものごとをどのような順番で考えるのか、どのようなことを重要視されているのかを教えてください。
小泉:事業を始める際は四つのバランスを見ています。良い商品を作るためのプロダクト、認知度を上げるためのPR・マーケティング活動、これに対してお金がなければ進められないのでファイナンス、次にこれらをハンドリングするのが組織だと思っています。この四つのバランスで全体感を見ています。
マーケティング的な戦略ですと、いかにシンプルに伝えるかを意識しています。「メルカリって何?」と聞かれたら、「売ったり買ったりするアプリ」というように分かりやすくする。自分たちのバリューのポジションを明確にし、そこを切り口にCMやプロモーションをしていった経緯があります。
「社会をどう変えたいのか」といったミッションに近いところになると、人材や組織戦略も含めたことも重要になってくると考えています。
米田:ありがとうございます。次の質問で、今お話いただいた人や組織についてもう少しお話を聞かせてください。
ー人材や組織力の部分で、同じ方向性を向き求心力を高めるために、どのようなことをされているのでしょうか。
小泉:どんな組織、プロジェクトであっても言語化をすることが大切だと考えています。言語化をすることで自分たちのやるべきことがクリアになり、共感の輪を結んでいくのではないかと思います。社員の皆に分かりやすく、共感しやすく、口に出しやすいということを意識しています。
米田:確かにそうですね。自分たちが何を磨き込むのか、また施策の目的から全般にわたり、どれだけ理解しているかによって、自分の中で意識的に動けるのかといったことにつながりますね。
本日は他にもたくさんのご質問もいただいておりましたが、残念ながらお時間となりました。小泉様、本日は貴重なお話をありがとうございました。