UNITED DX UNITED

新しい可能性を次々と生み出すVisional代表、南壮一郎が語る
事業づくりは、仲間づくり

ウェビナー報告

今回のウェビナーは、ビジョナル株式会社の代表取締役社長 南 壮一郎氏をお招きし、事業づくりにおいて、いかにして優秀な人材を獲得し、事業成長を実現させていくかについてお話しいただきます。当社からは執行役員 事業戦略担当 米田 吉宏が登壇し、対談を行いました。

Visionalについて

南 壮一郎(以下、南):初めにVisionalという名前を聞き慣れない方もいらっしゃるかと思いますが、昨年頭までビズリーチという社名でした。HR Tech領域においては、創業事業である即戦力人材向けの転職プラットフォーム「ビズリーチ」や、クラウド型の人財活用プラットフォーム「HRMOS」などを展開しています。また、インキュベーション事業セグメントにおいては、HR Tech領域とは異なる領域の新規事業を立ち上げ、事業承継M&A、セキュリティ、物流領域において、本日のテーマでもある“DX”をテーマにした業務フロー、産業のトランスフォーメーションにも取り組んでいます。それぞれの事業のビジョンや、事業に適した組織体制・制度などが異なりますので、よりスピーディーな意思決定を通じて事業を加速させていくため、2020年2月にグループ経営体制に移行し、新たなグループ「Visional」になりました。

<ビジョナル株式会社 代表取締役社長 南 壮一郎>
1999年、米・タフツ大学卒業後、モルガン・スタンレーに入社。2004年、楽天イーグルスの創立メンバーとして新プロ野球球団設立に携わった後、2009年、ビズリーチを創業。その後、採用プラットフォームや人財活用プラットフォームをはじめとした人事マネジメント(HR Tech)領域を中心に、事業承継M&A、物流、Sales Tech、サイバーセキュリティ領域等においても、産業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する事業を次々と立ち上げる。2020年2月にVisionalとしてグループ経営体制に移行後、現職に就任。2014年、世界経済フォーラム(ダボス会議)の「ヤング・グローバル・リーダーズ」に選出。

本日は新規事業における仲間づくりがテーマとなります。私自身、これまで数多くの仲間たちとともに事業づくりをしてきたというのもありますし、Visionalのグループミッション「新しい可能性を、次々と。」にもあるように、今後も事業づくりを通じて、さまざまな社会の課題を解決していきたいと考えております。

新卒で投資銀行のモルガン・スタンレーに入社し、楽天イーグルスの創業に携わった後、2009年にビズリーチを立ち上げました。先ほども触れましたように、HR Tech以外の様々な領域においても新規事業を立ち上げ、今のVisionalに至っているという経緯があり、振り返ると、社会人人生の大半を新規事業の立ち上げに関わってきました。

そんな経歴ですが、新しい事業を立ち上げるにあたり、私自身が最も重要視している事は、「課題の本質」の抽出です。さまざまなリサーチを通じて「課題の本質」の抽出を事業づくりの出発点とし、事業構造を要素分解し、世界中の成功事例を徹底的に調べつくし、意思決定の判断軸をつくっていきます。

例えば、昨今“DX(デジタルトランスフォーメーション)”という言葉をよく耳にしますが、実は、何年も前から国のレポートやホワイトペーパーに同じような内容が書かれているのを皆さんご存知でしょうか。デジタル技術によって、さまざまな業種の業務フローや産業のビジネスモデルが変革されていく未来をしっかり捉えて、その構造から理解し、構造を根底からトランスフォーメーションするという意識のもと、新規事業や事業開発を進めることができるかどうかが重要なポイントだと思います

人材採用とDX推進について

日本の企業でDXの取り組みが進まないという話をよく耳にしますが、その理由を調べていくと、「戦略・目的が不明確」でITというものを正しく理解できておらず正しい判断ができない、どのような人材が必要か理解できていないといったことが要因とよく挙げられています。つまり、“人材”の問題が一番大きいと思われます。社内のDXやDXを活用した事業開発を進めるには、まずは、それぞれの現場において課題を明確化し、DXを正しく理解し、本質適な課題解決を推進できる人を配置するのが鍵です。

実際に、転職市場を見渡すと、DX関連求人数は前年同期比で1.5倍以上にも伸びており(※ビズリーチ調べ)、多くの企業の皆さまが、人材獲得に向けて動き出していることが分かります。

ビズリーチにおいても、積極的にDX人材の登用を進める企業様のお手伝いを多くさせて頂いております。新卒一括採用中心であった企業様が、中途採用や副業兼業人材を登用し、新規事業を担う外部登用を加速させているケース、新事業領域からダイレクトリクルーティングを行う攻めの中途採用へ軸を移して、小さな成功事例を積み重ね他部門へ波及させている企業様のケース、中途採用への強化を皮切りに、副業解禁など新人事制度を構築し、社内の変革を加速させている企業様のケースなどがあります。

「DX×人材」というテーマに関して、全社を挙げてDX人材の確保に給与設計まで変更をして採用するのがいきなりは難しいということでしたら、やれるところから工夫をして行って成功している事例もあるということを、知ってもらえるとよいと思います。

繰り返しとなりますが、事業づくりは仲間づくりであり、人材採用は経営戦略そのものです。経営チームがDXの本質や、ITが持つ可能性について十分に理解している場合は別ですが、経営チームがそのスキル、経験、知識が十分に備わっていない場合は、社外からその領域に長けている人材に加わってもらい、未来に向けて速やかに動き出すべきです。また自身が外部から加わる人材の立場に立ち。どのような環境でどのように働きたいのかをしっかり考え、自社にて活躍できる環境を整えてもらいたいです。

先日発売となった書籍『突き抜けるまで問い続けろ』では、Visionalの新規事業の歩みや事業づくりにおける仲間づくりについて書かれております。もしよろしければ、ご覧になってください。

対談

米田吉宏(以下、米田):南様、ありがとうございました。ここからは、いくつか質問にご回答いただこうと思います。

<ユナイテッド株式会社 執行役員 事業戦略担当 米田 吉宏>
慶應義塾大学経済学部卒業後、 2010年株式会社電通入社。2013年ボストン コンサルティング グループ入社後、主に通信・メディア・テクノロジー領域の経営戦略策定、新規事業開発、営業戦略、組織戦略等を担当。プロジェクトリーダーとして従事した後、2019年3月ユナイテッド株式会社執行役員に就任(現任)。DXソリューションの立案/推進と、全社戦略/組織強化を担当。

参加者の皆さまからのご質問

米田:特に「課題の抽出」と「人」の部分が非常に大切だというメッセージでしたが、われわれも後者の「人がなかなか採用できない」という企業様とディスカッションをする機会がございます。どうしても外部に目を向けずに自社都合、特に制度変更ができない、コストが高すぎる、という理由でできる範囲で訴求内容を変えるという企業様が実態としては多いように見受けられます。そのような中で成功している企業は、どのようなことが引き金となって成功に向かったのでしょうか。

南:成功の引き金は、「できないということを認めること」だと思います。DXやITを活用した経営は、学んですぐできるものではありません。移り変わりが早く激しいく、経験、スキル、知識がない中で0から学んでなにかをやろうとすることには限界があるので、まずは自分では「できません」と素直に認められない限り前には進みません。ひょっとしたら中途半端に何か流行りのもののように推進するよりかは、選択として「敢えてやらない」という決断も一つの手かもしれません。世の中の流れを見ると、とことんDX化の道を進むのか、またはアナログなオペレーションを徹底的に磨き込み、人間の介在価値を最大化するのか、世界は両極端の方向に進んでいるように思います。アナログを磨き込み、実際に人間が介在しているからこその価値を発揮している素晴らしい会社や事業はたくさんあると思います。何ごとも中途半端にやろうとするのではなく、どちらのスタイルを目指すのかをはっきりさせることは経営において重要なポイントだと思います。

米田:おっしゃる通りだと思います。これまでディスカッションをする中で、根本的なDXに対する腹決め、どれくらい踏み込むのかに対して曖昧なまま「何かDXをしなくてはいけない」と感じている企業も多く、そうなると人材にどれくらいの費用をかけるのか意思決定をしづらい状況になります。ですので先ほどのどちらを目指すのかということに対して、きちんと目標や覚悟を持って進めるべきだと同感しました。

昨今は「DXを行う」ということが自己目的化しがちですが、本当に経営面で突き詰めてみるとコアコンピタンスを磨き続けて、競合優位性または成長角度を高めていくということを目的としたときの一手段であると捉えるべきです。その時に考えるのは、根本的には自社の中でデジタルのケイパビリティや企画、運用を定着させていかなくてはならないと、私も強く思いますし、コンサルティングをする中で非常に心掛けているところです。一方でこれまで内製の方向に移行する際の難しさを感じることもあります。一つめは、そもそもどうプランニングするのか、ということ。二つめは、それを実際のオペレーションに定着させていくということです。プランニングに関してはリーダーが入り大きくドラスティックに変えていくのが望ましいのですが、例えば人手不足の時には、同じプロトコルで話せる人材がスポットで入り立ち上げを進めるというのが、事業リーダーとコンサルの適度な距離感なのかと感じているところです。組織能力が定着していき自律的に回っていくのが最終的に目指すところで、その一時的な支援をコンサルティングで担保する企業様もいらっしゃいます。

次の質問に進みます。

先ほど有効求人倍率の1.5倍という水準が出ておりましたが、ご質問の中にそもそも日本に変革できる人材が少ないのではないか、というご指摘があったのですが、そのあたりはどのようにお考えでしょうか。

南:会社としての明確なミッションと、何を実現しようとしているかという要件定義と適切な報酬や給与、さらにやりがいも含めて、労働市場に提案できれば、自社にとって本当に必要な人材を採用できるはずです。そえゆえに、採用が強い企業と弱い企業が存在します。いまいちど、皆様がDX人材の場合、どのような会社で働きたいのかを考えてみてください。どのような企業が有利、不利であり、どのような点で会社が選ばれているのかが容易に頭に浮かぶかと思います。新しい環境で自分の経験、スキル、知識を活かし、成果につながる仕事ができるのか、そもそも仕事内容にやりがいがあるのか、会社や一緒に働く仲間たちの想いや志によって採用における優劣は著しく差が開いてきています。なぜ自分たちは変革を起こせるような人材を採用できていないのかということを、正しく認識しない限り、何も始まりません。

米田:非連続な取り組みをするのに、既存人材だけでの成功がなかなか難しい中で、暗黙的に社内の慣行や慣例で変えられるもの、変えられないものを無意識に追随してしまい、本来、給与や制度を変えることができるレバーがあるのに、変えられないのではないかと思ってしまい採用ができていないケースもあるのかなと思います。

南:先ほどビズリーチをご利用いただいている企業様のケースでも述べましたが、いきなり大きく変わろうとするよりも、まずは小さな成功体験を社内で積み重ねていくことが採用面や新規事業面でも大切なのではないかと思います。

米田:ありがとうございます。では次の質問に移りたいと思います。南様が人を集めるときに心掛けていることをぜひお伺いできればと思います。

南:先ほどから“課題”という言葉を何度も口にしていますが、その課題に対してどこまで深く想いを持って人に語りかけられるのかということを大切にしています。常日頃から、われわれはどのような社会の課題に対して、どのような本質的な課題解決をするのか、どのようなインパクトを作りだし、社会をどのように変えていきたいのかを社内外で発信しています。その内容こそ、入社を検討している方々に伝えるように心がけています。また自分自身がワクワクしていないものに対して、第三者をワクワクさせることはできません。今自分たちがどのような理由でなぜこの会社で働いているのか、をきちんと言語化して伝えるように心がけています。採用するために採用しているのではなく、入社後の活躍を期待して採用をしています。だからこそ、入社後に味わうであろう自分や会社のありのままの姿でお話をしています。人材採用の本質でしょうか。

米田:ありがとうございます。候補者目線で本当に自社で働きたいと思うか、それを反映する意味で、自分が働きたいかどうかなどを振返ることは非常に重要なプロセスですね。

それでは次のご質問に移ります。

課題の抽出方法に関してお伺いいたします。自社の課題を調査しているかと聞かれると「している」という企業が多いのですが、南様が考える課題の抽出レベルとギャップがあるように見受けられますが、その差は何なのか、これまでの経験から参考になる事例などがあれば教えてください。

南:社会の構造が変わるときや新しい技術によって世の中が進展するときは、様々な課題が必然的に生まれます。その課題の本質が何なのかを徹底的に捉え出発点にしているのが、私自身の事業づくりの型です。私の場合、特徴的なのは課題発掘と磨き込みのための情報収集に圧倒的な時間と量をかけています。新規事業はよく“発想”や“アイディア”という言葉に近しいイメージを持たれる方が多いかと思いますが、私の場合、新規事業は”努力”だと捉えています。情報収集の精度と見極めに重きを置いていて、世の中に流通している誰もが持っている情報(二次情報)を通じて、いかに一次情報にたどりつけるのかどうかを大切にしています。関心を持つ課題に対して、日々仕事して実際に取り組んでいる方々にヒアリングをしまくります。また世界から見ると、日本はITやDXにおいて既に後進国ですので、海外の一次情報を持っている方々の話をお伺いに行きます。日本で課題となっていることの多くは、既に海外のスタートアップが課題解決に動いているケースが多く、創業期からのメンバーや現職の方々にインタビューを徹底的に行います。これまでどのような失敗があり、どのように乗り越えてきたのか。またビジネスモデルの転換など、ありとあらゆる角度から事業の状況と構造を理解できるよう務めます。その後、ベンチャーキャピタルや投資家の皆さんにもお会いして、中長期的な業界やビジネスモデルの展を聞き、それら情報を日本に持ち帰ります。その後、日本市場の調査を行いながら、事業づくりを進める判断をした場合は、ありとあらゆる方々にお会いしながら、立ち上げチームをつくり始めます。これが私の課題発掘から課題設定、事業の立ち上げの型です。色々と話してきましたが、この一連の行動は誰でも努力すればできる事だと思いますし、努力の量や質では誰にも負けたくないという強い気持ちを持ってこのプロセスと向き合っています。

米田:ありがとうございます。これまで拝見した中でも情報をそのまま真に受け表層的に理解しているケースが多々見受けられます。今のお話を聞いていますと、因果関係や大きな課題があった際にそれを分解し、なぜそのようなことが起きているのかをしっかりと理解しきること、そこにヒントがあると感じました。かつ進んでいる先進国があれば、しっかりとベンチマークすることも非常に重要だと思います。

南:自分自身、ビズリーチを創業した12年前においては、ITやインターネットのことを何も分かっておらず、よい仲間に集まってもらい、みんなから日々学びながら、地道に丁寧に進んできました。自分が分からないのであれば、新入社員になったつもりで分かっている方々に頭をさげて教えてもらえばよいのではないでしょうか。分からないことを認めることができるか否かが、新しい領域で何か新しことを始めるうえで大切なことだと思います。また、現代の変化し続ける時代の中で、何かを変えたいと思うのであれば、自分自身が一番変わっていき、変わるために学び続けることが全てのスタートとなります。それが本日の私からの一番お伝えしたいメッセージであり、そして、私自身もこれから変わり続けるために学び続け、皆さんとともに、一緒に日本をより良くしていきたいと思っています。

米田:本日は示唆に富んだお話をありがとうございました。