UNITED DX UNITED

美容師とお客様の繋がりをもっと強く
ミルボンのDXはそのためにある

対談

ユナイテッド株式会社では、各業界でDXのトップランナーを取材しています。

今回はヘアサロン業界で初めて今までの美容室専売商品に対するイメージを一新するサービスである「milbon:iD」を生み出すなど、新しい美容との関わり方を切り開く株式会社ミルボンへ取材に行きました。株式会社ミルボンは、美容室向けのヘアケアなどを製造・販売するメーカーです。経営戦略部長 坂下秀憲氏に「milbon:iD」が生まれた背景から「milbon:iD」のどこに新規性があり、どのような価値を提供しているのか、そもそも生まれるきっかけともなったヘアサロン業界の課題までお伺いしました。

milbon:iD」の強みは何か

関 彩(以下、関):2020年6月に業界初となる美容室専売品のECプラットフォーム「milbon:iD」をリリースし大きな話題になりましたね。改めて「milbon:iD」とはどのようなものでしょうか。

坂下 秀憲(以下、坂下):「milbon:iD」とは来店顧客限定の美容室出店型のECプラットフォームのことです。美容師とお客様をIDで結びつけることによってお客様側は通っている美容室からお気に入りのヘアケア商品をWEB上で購入することができ、美容室側はECサイトの受注・在庫管理・配送作業の手間を省けるという両方にとってメリットとなるサービスです。

関:「milbon:iD」はどういう経緯で生まれたのでしょうか。

坂下:「milbon:iD」は販売方法と購入方法を分けて捉えたことで生まれました。当社が提供している商品は“美容室専売品”というものです。これは、プロが使用するものであるため、種類が多かったり、効果の合う・合わないが大きかったりすることから、専門性を持つ美容師さんとの対面カウンセリングに基づいて消費者へ提供するという考え方です。ECは、対面カウンセリングなく商品提供がなされてしまうため、業界でもご法度とされてきました。しかし、対面カウンセリングがきちんと提供できれば、ユーザーの利益は棄損しないということですよね。そこで、販売方法と購入方法を切り離して捉えてみたのです。リアルな対面カウンセリングはそのまま、販売方法はリアルの他にオンラインの選択肢を持つことも可能ではないかと。そこから対面カウンセリングを受けた後、お客様がネットで欲しい商品をその美容室からネットで購入するという新しい世界を作り出しました。当初は社内外からの逆風はありましたが、購入の方法だけネットになっただけで、あくまでも対面カウンセリング販売を従来通り保っていることが徐々に理解されていき、逆風は全くなくなりました。

<株式会社ミルボン 経営戦略部長 坂下秀憲氏>
2001年ミルボン入社。関東エリアでの営業を経験後、2003年にマーケティング部で商品企画を担当し、2005年に経営企画室へ。2010年からはミルボンUSAのPresidentとしてニューヨークへ赴任し、北米市場のビジネス展開を主導。2018年に帰国し、経営戦略部長に就任。以降企業の経営戦略立案を担っている。

関:そこまで美容室専売品のネット販売にこだわったのはなぜですか。

坂下:今はネット時代でオンラインショッピングが主流になりつつある社会です。それは当然だと思います。ほしいときにボタン1つで簡単に手に入るのですから。しかし、美容室専売品は、依然として美容室まで足を運ばないと購入できないというのでは、やはり不便です。「milbon:iD」の価値は、商流は変えないままで、お客様に美容室専売品をもっと手軽に楽しんでいただけるところにあります。

関:販売チャネルをネットに広げていくときに配送料の負担先の問題が生じてくると思うのですが。

坂下:おっしゃる通りです。実は、当社はおよそ20年前に美容室からお客様に商品を配送することを考え、プロジェクトを立ち上げ実験していました。だが、配送料をどこが負担するかという問題が立ちはだかり断念せざるを得なかった。当時は配送料を消費者が負担するなんて考えられない時代でした。そんな中で、たとえ2000円のシャンプーを購入いただいたとしても、配送料を負担していては商売になりません。しかし、今はお客様が配送料を負担する時代にシフトしてきました。お客様は、配送料を負担するわけですから、自分が本当に欲しいと思っているものにお金を使います。つまり、「どうやって売るか」ではなく「何を売るか」がポイントとなってきます。我々が売っているのは、美容室でカウンセリングを受けてから買う美容室専売商品です。だからこそ、「milbon:iD」がお客様にとって価値を持つのです。もちろん、WEBに関するテクノロジーが進化したこともありますが。

関:なるほど。ということは20年前から試行錯誤を含め、milbon:iDの実現に向けて動き出していたということですか。

<ユナイテッド株式会社 UNITED STRATEGY, Vice President 関 彩>
2009年ベイン・アンド・カンパニー新卒入社。全社成長戦略の立案や複数のM&A案件、新規事業創出案件などに取り組む。2015年株式会社ビューティーエクスペリエンス(現 株式会社b-ex)入社。経営企画部長として従事。2020年ユナイテッド株式会社入社。事業戦略部長、人材開発部部長を経て、2020年12月からUNITED STRATEGY Vice Presidentに就任。DXソリューションの立案、マーケティングを担当。

坂下:そうです。美容室専売品の利便性を高めたいという想いは脈々と社内で受け継がれて、今の「milbon:iD」に繋がっています。

milbon:iD」はどのような世界を目指すのか

関:「milbon:iD」は今後どのような形を目指しているのでしょうか。

坂下:現時点の「milbon:iD」は、お客様が美容室に行かなければ買えなかった商品をネットで買えるようにしているに過ぎません。つまり、消費者からすれば不便がなくなっただけで、まだ何の+αも生んでいないのです。ここで終わらず、リアルとデジタルが融合された新たな世界で、美容をもっと楽しんでもらえる場を作りたいのです。我々は常に「milbon:iD」が、お客様と美容室にどこまで寄り添えるかを探求しています。実は「milbon:iD」という名前には、美容室を利用する全員のお客様に持ってほしいという思いが含まれています。「milbon:iD」はコードで美容師さんとお客様が繋がっているという新たなかたちをスタートとして、お客様が美容をもっと楽しめる世界を提供していきます。

関:「milbon:iD」を持つ美容室やお客様が増えていくと、幅が広がりますね。例えば、IoTを繋げることやサブスクリプションの管理も容易に可能になりますよね。

坂下:そうですね。まだ「milbon:iD」は始まったばかりですが、今後に期待してほしいです。

ヘアサロン業界のデジタル活用における課題は何か

関:ヘアサロン業界においては、デジタルの活用度、浸透度はどの程度ですか。

坂下:美容師さんはお客様との対面の接客に集中しています。そのため、どうしても美容師さんはデジタルに疎遠になりがちです。それが美容室のバックオフィス業務におけるデータの活用ができていない現状につながっています。

一例を挙げると、美容室での顧客データの活用はあまりなされていません。データを統計的に使ったりするのはこれからの課題だと認識しています。なので、なんでもできるシステムを提供することも大切ですが、美容師さんの普段のオペレーションにストレスが無いように、顧客情報や履歴をデータ化できるようにサポートすることがさらに大切です。

貴社が今後取り組みたいヘアサロン業界の課題は何か

関:貴社が次に取り組んでいきたいヘアサロン業界の課題は何でしょうか。

坂下:美容室とお客様が、もっともっと身近な関係になっていくことです。そのためにはシームレスなやりとりの実現が不可欠です。DXを進展させることで、データを用いた顧客管理とコミュニケーションを実現していきたいです。例えば、対面での接客時以外で、お客様がECでどの商品を見ているのか、買っているかなどの情報を連動させることはシームレスなやりとりの一端を担うものです。また、同時に美容室のサロン経営のオペレーション体制の見直しもしていく必要もあります。

我々が直接サロン経営をするわけではないですが、ミルボンは美容師さんとお客様の間を見守り、より両者を繋げていくサポートをしていきたいと考えています「milbon:iD」もその中の1つなのです。

関:IDを持つことで、美容師さんとお客様の強い繋がりが実現するということですね。本日は貴重なお話をありがとうございました。