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≪執行役員が語る≫ リサーチの極意

ウェビナー報告

ユナイテッド株式会社が主催したウェビナー「≪執行役員が語る≫ リサーチの極意」のレポートをお届けします。ゲストには、株式会社ビザスクから執行役員 CEO室室長 兼 lite事業部事業部長 宮崎 雄氏をお迎えし、当社からは執行役員 事業戦略担当 米田 吉宏が登壇しました。

コンサルティングファームにおける情報収集の要諦

<ユナイテッド株式会社 執行役員 事業戦略担当 米田 吉宏>
慶應義塾大学経済学部卒業後、 2010年株式会社電通入社。2013年ボストン コンサルティング グループ入社後、主に通信・メディア・テクノロジー領域の経営戦略策定、新規事業開発、営業戦略、組織戦略等を担当。プロジェクトリーダーとして従事した後、2019年3月ユナイテッド株式会社執行役員に就任(現任)。DXソリューションの立案/推進と、全社戦略/組織強化を担当。

米田:本日は、コンサルティング会社で行っている情報収集についてご紹介します。全体像としては、大きく分けて4つのステップを踏む形で進めています。まず初めに課題認識として「今回明らかにするべき問いは何か」を整理したうえで、デスクトップリサーチやエキスパートインタビューを活用し情報を集め、情報の信ぴょう性を検証し、最終的にどんなことが言えるのかという「So What?」をまとめる、というのが大きな流れです。

ステップ1:課題認識/ロードマップ策定

まず課題認識の部分については、「市場性はどうなのか」「われわれの知見や経験を活かして勝ち切れるのか」「事業開発を行うのか行わないのか」など、背景をブレイクダウンし、論点を設定するところから始めます。抽象的なままだとリサーチすべき対象が絞り込めないため、もう一段細かく具体的にした課題設定がまず1つ目のポイントになるかと思います。ここがずれているとその後の労力は無駄になってしまいますので、ユナイテッドのコンサルタントがリサーチを行う際にも意識的に行っています。

ステップ2:情報の獲得

明らかにしていく問いが決まったあとは、どんなソースに当たるのか、いつどの順番に当たるのかを検討します。短い時間で最大効率でリサーチを行うために、例えばウェブ記事やアンケート、ビザスクさんを活用したようなエキスパートインタビューなどさまざまな手段がある中で、どの手段を使うのかを吟味します。そして、それをどのような順番で行っていくのかというある程度の設計をまずは行っています。例えば1日目でざっとウェブ検索をしてみて、ある程度仮説を作ったうえでインタビューしよう、といったイメージですね。

どのような順番で行っていくのか、どんな情報に当たるのかということがクリアになってきた後は、実際に情報の獲得を行っていきます。大体大まかに分けると日経テレコン等を活用した記事検索や、各社IR情報やSPEEDAを使った企業情報分析、またビザスクさんを使用させていただいて実施するインタビューや、フラーさんのデータやSimilarWeb等のデータベースを活用したサイト分析などがあります。このようなところに実際にアクセスしてリサーチを進めていくという形になります。

せっかくですので、記事検索などのデスクトップリサーチとエキスパートインタビューに関して、具体的なコツを少しお伝えできればと思います。

まずデスクトップリサーチでは、あくまでオープンな情報を見に行くため、深い情報はそんなに見つからないことが多いです。なのでザーッと当たりを付けて、何を掘ればいいのかや、何がポイントになるのかをしっかりと整理するというのが重要になります。この時に、長い時間かけたからといって質のよい情報が出てくるとは限らないので、時間を決めて効率的効果的にリサーチを行っていくということをわれわれの中では意識しています。

また特に大事なのが、検索キーワードを磨くということです。例えば雑誌社の DX をリサーチする場合、リサーチ対象の書き方を、個別の企業名で書くのか、業界で書くのか、固有名詞を入れてみるのか等少しずつずらすこと、またDXという言葉の定義もいろいろなのでトランスフォーメーションやデジタル化等の言葉を組み合わせて当たってみて、その中で有力なものを見ていくことが大事です。

その他細かいところでは、画像検索だとポイントがパッと理解しやすいので、都度利用しています。

次はエキスパートインタビューの話です。もちろんエキスパートの方なので聞けば答えを教えていただけますが、意識して「なぜそうなっているのか」のメカニズムを理解するのが極めて重要です。例えば市場規模が増えているのかということを考える際に、社数と1社当たりの売上に分解して、それぞれがどう推移して結果として市場規模がそのように変化しているのかを理解できるようにした方がいいと思います。また、あいまいな定義の言葉がどういうものを意味しているのかを聞き切ること、極力定量感まで聞き切ること、また気持ちよく答えていただけるようなファシリテートなどが重要になってきます。

このように、インタビューイーの方に根掘り葉掘り聞くために、「どんな問いに答えていただくのか」を明らかにするようなリストの準備を事前に行うことも大事なのかなと思っています。これらをちゃんと聞き切れるようにするためにコンサルティング会社ではインタビューガイドを用意することも多いです。例えばわれわれが用意しているものはこのようになっています。


ステップ3:検証・判断

そのあとは、検証判断のプロセスになりますが、本当にそのソースが正しいのかなどソースをもう一回見に行くことや、他の文献にあたってみて同様に書かれているのかを確認することを通じて、リサーチの結果が合っているのかを検証をするのがよいかと思います。重要な意思決定にかかわる情報ですと、検証していないと誤った情報に基づく意思決定をしてしまう可能性がありますので、われわれの中でも相当意識していますが、同様に皆さんも意識されるとよいのではないかと考えております。

ステップ4:So What出し

最後、もともとの明らかにしていきたいことに対して何を言っていくかというSo Whatについてです。ここでは、「問いは何か」を意識することが非常に重要です。いくつかポイントがあるのでお伝えします。

まず、介在価値を考えることが重要です。相手が知らない情報や気付いていない情報が価値になる情報なので、そのようなものが本当に十分にあるのかを意識してSo Whatを出しに行くという姿勢が大事だと思います。また効率のよい考え方ということで、本当にこの問いにこの解でいいのかとなったら改めて情報収集のプロセスを考えてみるなどが大事かと思っています。また、依頼者が必ずしも情報を評価する側ではないことがあるので、この情報で意思決定するのは誰なのか、最終的な知的成果の受け手、顧客は誰なのかを考えたりすることも重要だと思います。どのくらいのレベルのクオリティの示唆を求められているのかを最初に理解したうえでリサーチに臨み、意味合いを見出すことも重要です。最初に課題を設定しましょうという話もしましたが、一つ一つのタスクにとらわれてしまうと、いつのまにかもともと答えるべき問いとずれたものを頑張ってまとめてしまうことにもなりえます。ゆえに原点に立ち返って、何に対して答えるリサーチなのかを念頭に置きながら最終的なSo What出しができると、リサーチとしてもよいものになると思っています。

これまでコンサルティングを行ってきた中で、われわれの中で意識しているTipsやどのように調査の設計をするのかについて紹介させていただきました。

新規事業開発における情報収集方法

<株式会社ビザスク 執行役員 CEO室室長 兼 lite事業部事業部長 宮崎 雄>
2006年にリクルートHRマーケティング(現リクルート)に新卒で入社後、営業・新規事業開発などを経て、リクルートホールディングス、リクルートジョブズ(現リクルート)の経営企画部門の責任者として従事。2019年3月よりCEO室長としてビザスクへ参画。2019年12月からは、ビザスクlite事業部の事業部長を兼務し、2020年5月に執行役員へ就任。

宮崎:ビザスクの宮崎と申します。簡単に自己紹介をさせていただければと思います。私は2006年にリクルートに新卒入社をして、13年在籍しておりました。新規事業開発や、最後の方は経営企画の責任者を務めました。そして2年前にビザスクにジョインし、新規事業のご支援等をさせていただいております。

ビザスクのことをご存じでない方も多々いらっしゃると思いますので、簡単にご紹介させていただきます。ビザスクはビジネス領域に特化したナレッジプラットフォームを運営しております。具体的には、社外の知見を活用したいという企業さんに対して、われわれの持っているデータベースから最適な方を紹介することで、必要な情報やナレッジを得ていただくというものです。われわれはスポットコンサルと呼んでいるのですが、そのような短時間取引をマッチングしているサービスになっています。

非常に多岐に渡る業界・職域の方に登録いただいておりまして、何か知りたいと思ったときには国内であればおおむねどなたでも紹介できる状況になっております。また海外においても直近で言うと3万人の方にご登録いただいておりまして、海外調査であってもさまざまな情報をご提供できるようになっているかなと思います。

ビザスクは、コンサルティングファームや金融機関等に情報収集の手段としてご活用いただくことが多いのですが、最近利用社数が伸びているのはB2Bの事業会社さんです。新規事業を行う際に「なかなか仮説検証が出来ない」「対象となる方がいなくてヒアリングができない」といった場合に使っていただくことが多くなっています。

具体的にLIONさんの事例でいくと、企業として口臭に関する知見を多く持たれているが、画像解析に関する知見は少ないという状態でした。そこで画像解析の専門家の方を紹介することで、新規事業を一気に加速していくことに成功しています。このような形で企業さんが持っているものと持っていないものをうまく組み合わせて行くということを行っております。調査の全体感については米田さんの方からお話しいただいたと思いますので、私の方からは特に新規事業のところについてお話しできればと思います。

まずわれわれの方で新規事業に従事する100人の方に失敗経験についてお伺いをしたのですが、大きくこの3つに集約されるかなと思っています。

1つ目が意思決定者を説得することができなかったという点、2つ目が調査検討にリソースをかけすぎてしまったという点、そして最後、仮説検証が十分にされないまま事業が推進されてしまったという点です。これらの課題を新規事業のプロセスに置き換えて考えてみますと、アイデア創出のフェーズ、仮説検証のフェーズ、そして事業化判断のフェーズのそれぞれの課題になるかなと思っています。それぞれの領域においてどんな調査が活きてくるのかをお話しできればと思います。

フェーズ1:アイデア創出

まず初めのアイデア創出の段階で行くと、特定の領域を深く掘っていくというよりは情報を浴びるという段階にあると思います。どのような情報を浴びればアイデア創出につながりやすいのか、というそのあたりのTipsをお伝えできればと思います。

まず初めにかなり一般論的な話にはなってしまうのですが、イノベーションは既存の知と既存の知の新しい組み合わせで生まれるというのはよく言われると思います。最近で言うと知の探索という言葉も有名になっていますが、自分が知らないものを組み合わせて何か新しいものを生み出すために情報を浴びるということが非常に重要かなと思っています。

いくつか事例でお話しますと、以前リクルートではJobQuickerという「単発バイトを当日探せる」というサービスを提供していました。もともとの背景では、リクルートがフード業界にも事業展開する中で、人手不足の深刻さは自分たちの常識として持っていました。そのうえでアメリカでUberが爆発的に広がっているという情報を知り、これらを組み合わせることで新しいサービスを生み出せないかという着想で作られたのがJobQuickerになります。JobQuickerをリリースした2年後にTimeeさんというスタートアップが同じようなサービスを展開しており、現在はTimeeさんの方が広く使われている状態になっているため事業拡大のプロセスについては課題の残る事業ではありますが、そもそも自分たちの領域と他のものを組み合わせるという着想は悪くなかったのかなと思っています。

2つ目の事例として、われわれのサービス「ビザスク」自体も組み合わせによって生まれております。もともと創業者の端羽が事業を考えるにあたってさまざまな知り合いづてに話を聞きに行ったのですが、その中で1時間事業アイデアについてダメ出しをされる機会がありました。そのダメ出しが非常に有意義で、この1時間に対してお金が払えるなと感じたことが着想の起点になっています。それに対して海外では既にそこにマーケットがあるという情報が組み合わされたことによって、これを日本でもビジネスにできるんじゃないかということで、初めてビザスクというサービスが走り出したという形になります。このように自分たちが持っている体験や知識に他のものを組み合わせることで何かできないかという観点を持ちながら、情報をいかに浴びるかということが重要になってくるかなと思います。

その時の具体的なHowとしては、やはりウェブ記事等が非常に効率がいいんですが、普通にウェブ記事を見ていると自分の興味関心の中にあるものを見てしまいますので、意図的に仕組み化するという意味でGoogleアラート等を使いながら知りたい業界のキーワードを織り交ぜて、情報が入っていく状態を仕組み化していくことが重要です。また一般的な日経ビジネスというものを読むよりは、その業界で常識とされているような雑誌や新聞を読むことで、その業界の当たり前のことが見えてきて、そこと組み合わせると新しいアイデアの起点となるなと思います。

最後に異なる人と接するということなんですが、どうしても自社内だけで人と接していると新しいアイデア着想が生まれにくいです。できるだけ住んでいる世界が違う方と接する中で、どのようなことを気にされているかを把握すると、それがビジネスの兆しになることもあるかなと思います。

フェーズ2:仮説検証

アイデアを着想した後に重要になるのが仮説検証のフェーズです。
こちらスタートアップの事例になるんですが、Startup Genomeという3,000社以上の成功したスタートアップ/失敗したスタートアップを分析した調査によると、失敗した企業はまず課題の検証を行う前に、プロダクトを開発し、検証まで行ってしまうというパターンが多く見られておりました。

このように、検証を行う前に思いついたものをすぐ作り始めてしまうというのが新規事業における大きな失敗のパターンかなと思います。これをどのように解決していくのかというところなんですが、誰の何の課題を解決するサービスなのかの解像度をいかに上げられるかが重要かなと思います。アイデアを思いつくと、自分のアイデアには愛着がありますので「こんな課題持っている人はいるんじゃないか」と強く思ってしまうんですが、一歩冷静に引いたときに「そんな人は本当にいるのか?」「その人は、本当にその課題を抱えているのか?」というところを冷静な目で検証しに行くのが重要かなと思います。まず仮説を持ったうえで一次情報を取りに行ってそして仮説を検証して、もう一回仮説を構築していくというサイクルをいかに早く回せるかというところが非常に重要になってくると思います。繰り返しになりますが、仮説を持ったうえで一次情報に触れられるかというところが肝になってきます。

事例でお話しいたしますと、リクルートも「Airレジ」という飲食店のレジ周りを支援する新規事業を展開しているのですが、実際サービス検討/ローンチの前に新規事業開発者が副業として実際に飲食店で働き、どのようなサービスが必要なのかという実態を解像度高く理解したうえで、サービス展開に活かしていくということまでやっておりました。また、SALON BOARDというホットペッパービューティの裏側にある美容師の予約管理システムを展開する前においても、美容師さんのところにお邪魔して一日中業務を見たうえでどんな風に予約業務が行われているのか、また何が不になっているのかをしっかり把握したうえで、サービスにつなげていっておりました。仮説を持ったうえで情報を取りに行き仮説を検証していくというところが非常に重要になるかと思っています。情報を取りに行く際に、今お伝えしたような体験や観察は非常にパワフルな情報収集手段になりますが、数をこなすという意味で、初期仮説の検証ではインタビューというのが非常に有効になると思っております。例えばスタートアップさんでRevcommさんという会社さんが、自社のサービスを展開するにあたって「誰のどんな課題を解決するのか?」「どこのお客さんだとハマりやすいのか」という検証する際、各セグメントに分けたうえで、各担当者の方々にお話を窺って、どんな不を持っているのか、サービスがハマりそうかどうかを先に検証し、売るべき対象を設定して事業を展開されています。機能としても必要なものが磨き込まれているので無駄なものを作らず展開できているというお話を伺っております。

繰り返しにはなりますが、仮説をもったうえでできる限り一次情報を取りに行って、又聞きではなくその方々の実際の状況を把握しに行くというのが、筋のいい事業を作っていくにあたって重要なのかなと思っています。

フェーズ3:事業化判断

最後になりますが、検証のポイントとしてどうしても会議を通さないといけないというところが大企業だとよくあることかなと思っております。

スタートアップの企画書で重視されることとして

・なぜこれをやるべきなのか
・なぜわれわれがやるべきなのか
・なぜ今やるべきなのか

という要素があると思いますが、これ自体は企業の中における新規事業においても変わらず重要であると思っています。しかしやはり企業の中での新規事業だと、もう一つ難しいポイントとして、大企業ならではの制約やリスク回避思考を超えられないというところはよくあることかなと思っています。「いつ黒字化するの?」「この計画の蓋然性は?」など答えるのが非常に難しいような質問を必ず聞かれると。これに対してどう答えていきどう壁を超えていくかというところが、事業を作っていくうえで必要になってくるかなと思います。

また決裁者は長年の経験があるので、かなりバイアスを持っている場合が多く、新しいアイデアが出てきたときになかなか対応いただけないこともあると思います。この場合、米田さんの「分解して考える」というのとほぼ同じことになりますが、事業を実際の計画に落としていく際にどういった要素があるんだろうかと分解していくことが重要です。

どこの部分は解像度高く実際にできそうだがどこの部分はリスクが高いのかというように、分解した要素を整理していくと、リスクが限定できます。つまり、「ここの部分についてはわれわれの事業とアセット/ケイパビリティが活かせるのでこのKPIを達成できると思いますが、ここの部分についてはかなりチャレンジングなポイントがあります。ただし、ヒアリングなどの情報を組み合わせるとこのレベルまでは行けると思っています。」というように解像度高く伝えられると、聞く側としても安心感を持ったうえで起案を通せるかなと思っております。

もう一つこれも繰り返しになってしまいますすが、現場の声をいかに混ぜられるかも重要だと思っています。バイアスのある方に、いかにこれがいいんですと言ってもなかなか伝わらない中において、自分の意思ではなくて実際現場で課題を持っていらっしゃる声というのを直接お届けできるかが、決済を取る上で非常に重要なポイントかなと思います。一次情報を持ったうえでそれを起案の中でどのように説得材料に使っていくのかというのが最後のポイントとしては重要になってくると思います。しつこく経営会議とかでは聞かれるのでやる気のなくなる場面も多々あると思うのですが(笑)「どれくらい本気なのかを問われているんじゃないか」と脳内で変換し調査に取り組むというのがポジティブに取り組むうえで重要なんじゃないかなと思っております。

新規事業は確実性が非常に低いものなので、仮説構築してヒアリングして検証してというサイクルを永遠に繰り返し続けるというところが重要だと思っています。われわれのサービス含めて利用いただけると、少しお助けになれるんじゃないかなと思っております。

パネルディスカッション

ーーービザスクが使われるシーンとして新規事業のところ以外だと例えばどんな利用シーンがありますか。

米田:コンサルティング会社にいる立場からすると、ゼロベースで本を読んだりリサーチしたりすると相当時間がかかってしまうような、全く門外漢の領域をクイックに把握するという利用シーンはかなり多いと思っています。例えば、宇宙の開発について一定知らないといけないとか、その業界の方とディスカッションや商談があるというケースの時に、その業界が全般どのようになっていてどんな市場規模でどのようなプレイヤーがいるのかなどのランドスケープを、1時間でほぼほぼ理解できるというようなシーンですね。また何か業績を改善していきたいときに、業績改善するためのレバーは何かや、インパクトの強い部分は何かなどを理解することで、インパクトにつながるような改善策を抽出するというシーンでもよく使っていたと思いますね。

宮崎:仮説検証によく使うという話をさせていただきましたが、使い方としては確かにもう一パターンありますね。例えば仮説を作る前段階に情報収集として業界の有識者の方にお話を伺うと、なんとなく本で読んだ時は頭に入ってこなかった専門用語なども一回話を聞いた後で読むと「この人が言っていたことはこれか」と非常に理解度が深まり、その後の仮説を立てやすくなります。このような初期的な情報収集としても使っていただけるかなと思っていますね。

ーーー収集したデータの信ぴょう性の確認方法があれば教えてください。

米田:コンサルティング会社では、リサーチをして、その結果に基づいてクライアントさんの意思決定を支援するという業務になりますので、非常に信ぴょう性というものは重要視しています。具体的なその時の検証の仕方で言うと、大きな考え方としては3つあると思っていまして、1つは広範な方から意見をいただくというケースですね。本当に大事な部分は、1人の人に依拠せずその分野のエキスパート3人程度に聞いてみて、コンセンサスが取れている部分なのか、それともある種意見が分かれる部分なのかをちゃんと理解しに行くのは大事かなと思っています。

もう一つが因果関係を明らかにするということです。「理由や背景は説明できないが、結論がAですよ」という情報をうのみにすると、「実はAじゃなかったです」という状態にもなりえるので、本当にAなのか?なぜAなのか?を考え抜くことが重要です。

もう一つがダブルチェックみたいな話になるんですが、一つのソースではなく他のソースも当たってみるということですね。例えば政府の統計データを見てみるとか、専門誌を見てみるといったように、ソースを変えてみて、同様のことが言われているのかのバックチェックすることでこのあたりは担保しますね。もちろん細かくいうと、感覚として正しいかという直感はセンサーとして働いているんですが、大きく言えばこちらの3つで信ぴょう性については担保していっている認識です。

宮崎:われわれとしても推奨しているのは、一つのことを知りたい時に、おひとりの方に聞くというよりは、同じ領域のところで少なくとも3人くらいにはお話を聞いていただくのがいいんじゃないかなと思っています。やはり持っている知見が近いとしても、同じことを言っているところと差異があるところがありまして、そのあたりがどの辺にあるのかというのを見ていくと、みんなが共通して言っている部分と、個人の感想に近い部分が見えてくると思います。そこで「ここは信ぴょう性が高い部分だろう」という形で採択するという形もあるんじゃないかなと思っていますね。

米田:そうですね、差分があるのか共通しているのか、また差分がなぜ生まれているのかを理解するのは非常に有効だなと思いました。

―――インタビュー調査は、人によって調査結果に差が出やすいんじゃないかと思っています。調査対象を選定する基準があれば教えてほしいです。

宮崎:インタビュイーによる差とインタビュアーによる差があります。インタビュアーの差を埋めるには、さきほど米田さんの話にもあったと思うのですが、ある程度仮説を持ったうえでインタビューシートを作成し、何を聞くべきなのかを事前に用意しておくことが一つです。インタビュイーの差を埋めるには、今の裏返しになるんですが、インタビューシートのようなものを事前に送ったうえで、それに対して答えていただけそうかというのを事前のやり取りの中で確認したうえでライトパーソンなのかを判断いただくのがいいかなと思っています。経歴だけ見ると答えていただけそうな方でも、やっている領域が斜めにずれていたり、専門的ではなかったりということも多々ありますので、事前に対象になりそうな方に「こういったことが聞きたいのですが、お答えいただけますでしょうか」というところを把握したうえでインタビューすることが大事かなと思っています。米田さんはいつもどうされているんですか?

米田:調査対象者が適切なのかどうかは、パッとわかるような経歴などで一次スクリーニングはするものの、宮崎さんがおっしゃったように、本当にわれわれが聞きたいことに答えられますか?というのを事前にお伺いを立てるというアプローチは非常に有効だなと思っているので、それでライトパーソンなのかどうかはジャッジされるとよいのかなと思います。

もう一つがインタビュアーによって回答が違ってしまうみたいなところについてはなかなか難しい部分ではあるんですが、一つが先ほどのようにインタビューガイドという形で、極力誰がやっても同じようなブレイクダウンの仕方で聞くという形で担保するというのは非常に有効だと思っています。そのほか、インタビューをするときに、「本当なのか」「何故なのか」「他にはないのか」みたいな話を一つ一つ突き詰める力をインタビュアーが持つことが大事です。そこがある程度担保されれば、表層的に終わってしまうことはなくなるでしょうね。

宮崎:事業会社さんとのコミュニケーションの中で、どこにいる誰に何を聞くと自分たちの知りたいことが聞けるのかというのが難しいという話はよく聞きます。コンサルティングファームさんだとそのような設定をされる時にどんな工夫をされているんですか?

米田:そうですね、事前にインタビューガイドみたいなのをクリアにしておくことが割とセオリーにはなっているので、例えば業界のベストプラクティス企業をベンチマークしたいというときに、「なぜそこが強いのかご説明いただけますか?」「オペレーションってどういうものかご説明いただけますか?」などのある種チェックリスト的な部分まで落とし込んでいくレベルまで、事前リサーチの段階では行ったりしていますね。

宮崎:事前リサーチの段階でどこまでは自分でわかったけどどこが分からないのか、またバクっとした分からないものをもう少し具体的な分からないものに落としていって、それが答えられそうなのは誰なのかを決めていくと、得られるものとしては多いという感じですかね。

米田:コンサルティング会社って全体感を大事にするんですね。包括的に答えるとか包括的にリサーチするというのが基本的な姿勢としてあるので、「これ気になっているんだよな」という一点を気にしすぎて全体を聞き切れないことがないように、まずインタビューガイドで全体感を網羅していますね。そのうえで聞いてみたが埋まらなかった部分が割とクリアになった段階で2回目のインタビューを設定するというのケースが多いので、そこが確かに事業会社さんとの姿勢の違い、また差分としては生まれやすいのかなと思いましたね。

―――特に有効なリサーチ例はどういうものでしょうか。同業他社が先に行っているケースや、海外でビジネスモデルが伸びているケースというのはパッと思いつくのですが、それ以外にどのようなケースがあるでしょうか。

米田:このあたり事業会社さんとお話しされる中で宮崎さんいかがでしょうか?

宮崎:そうですね、先行的な事例を調べるというのは非常に速く有意義な情報を得られることもありますし、海外調査とかでも、よく昔タイムマシン系とも言われましたけれども、海外で流行っているものは何なのかという情報を用いて、自国に当てはめるとどうなのかというのは非常に有意義なパターンかと思っています。

また最近でいうと、ビジネスモデルは非常に近しいけれども、業界が違うものもあると思っています。先ほどのUberとJobQuickerの例で言うと、全くアルバイトという領域ではないけれどもビジネスモデル的に近いものが先行的にうまくいっているときに、何でうまくいっているのかというのを構造で分解し、それがうまくいっている要素を自分たちの業界に当てはめるとこんなことができるんじゃないか、というようなパターンですね。一見すると全く違う話に見えるけれども、共通する項目を抽出してきてその要素を明らかにするというようなことは、聞き手からすると新しい話になるので、Wowという情報にはなりやすいかなと思っています。米田さんはいかがですか?

米田:本当いかなるケースでも宝の山みたいなものがエキスパートインタビューだと思っているんで、全般いいと思っているんですけど(笑)やはり業界とか競合を知るにあたって、先行事例であれベストプラクティス事例であれエキスパートインタビューはとても価値があるなと思っています。自分たちの門外漢の領域であればあるほどそこはすごく有効な手段かなと思っていますね。

あとは先ほどのビザスクさんの生い立ちの部分じゃないですけど、壁打ちしてとても価値を感じたというのはあるかなと思っています。「こういう事業を行っている企業はこういうものが業績レバーとしてインパクト大きいと思うけれども、そのあたりって本当にインパクト創出しますか?」という仮説をその分野で何十年やってきた人とかにぶつけてみると、「それってパッと思いつくけれどこういう理由でこの業界ではそんなに有効な打ち手ではないんだよ」というような先人たちの過去の経験に裏打ちされた意見や反論をいただけることがあって、それ自体はとても価値があるなと思っています。

特に事業会社さんの中ではそこの二つが大きいんじゃないかなと思っていますね。

―――B2Cサービスでインタビューが有効だった事例は何かありますか?

宮崎:B2Cこそインタビューは有効かなと思っていますね。B2Cの場合であればある程度インタビュー対象者も選びやすいですし、また実際にどのような行動をしているのかとか、どんなことに課題を感じているのかという事実を掘り出していくところにおいては、非常に有意義だなと思っています。弊社のクライアントさんの中でも、B2BではあるもののエンドクライアントがCの企業さんも多いです。最近ではコニカミノルタさんが「クンクン ボディ」という体臭を可視化するという新規事業を作られていて、販路としてはB2Bで営業していくのですが、最終的に使っていただく方はCなんですね。そこで実際ニオイに関わる課題がどこに一番強くあるのかというのをインタビューで掘り出していくと、販売接客業の方々がビジネス上どうしても気にしているというところが見えたりして、そこに向けた売り方/サービスにしていかれていました。またそれにリーチできる販路はどこなのということで、今度はB2Bのどの販路を使えばいいのかをヒアリングをして、解像度を高めていかれていて、非常によく使っていただいている事例かなと思いますね。

―――インタビューをするエキスパートの方はどのようにリクルーティングされていますか?

宮崎:国内で言うと登録者の方も十数万人になっているので、概ね高いレイヤーの方から現場レイヤーの方までご紹介できるかなと思います。ピンポイントでお聞きしたいという場合でもしわれわれのデータベースにいらっしゃらない場合でも、われわれのコネクションだったりさまざまなデータベースを生かしながら独自のリクルーティングを行っています。「こんな人でも聞けるんだ」というニッチかつハイレイヤーな方にインタビューすることも可能になっていますね。米田さんも、「こんな人に聞けたんだ」という例はありますか?(笑)

米田:そうですね、ビザスクさんには前職現職含めて相当お世話になっています(笑)われわれの方で事前にこういう人にインタビューしたいというリストを作って、その人たちがもしデータベース上にいらっしゃらなくても独自にアプローチいただいてその中から何件かインタビュー出来たという事例があって、本当にそういったところは良かったなと思っています。具体的に言うと、とある中部地方の県でベーカリーを内接しているパン屋のオーナーにインタビューしたいというケースがあって、そのレベルでピンポイントでインタビューするのは難しいのですが、そういう人まで見つかってインタビューできたというのは過去の経験でありますね。

時間が来たので質問への回答はこちらで終了となります。本日のウェビナーを通して、参加者の皆様が持ち帰るものがあったのであれば幸いです。宮崎さんありがとうございました。