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【デジタルマーケティングのプロが語る】
データ基盤を活用したカスタマーエンゲージメントの高め方

ウェビナー報告

今回のウェビナーは「【デジタルマーケティングのプロが語る】データ基盤を活用したカスタマーエンゲージメントの高め方」をお届けします。ゲストに株式会社EVERRISE 取締役の伊藤孝氏を迎え、当社執行役員 米田吉宏と顧客エンゲージメントを高めるデータ活用をテーマに対談を行いました。

事業に活かすデータの持ち方・使い方

<ユナイテッド株式会社 執行役員 事業戦略担当 米田 吉宏>
慶應義塾大学経済学部卒業後、 2010年株式会社電通入社。2013年ボストン コンサルティング グループ入社後、主に通信・メディア・テクノロジー領域の経営戦略策定、新規事業開発、営業戦略、組織戦略等を担当。プロジェクトリーダーとして従事した後、2019年3月ユナイテッド株式会社執行役員に就任(現任)。DXソリューションの立案/推進と、全社戦略/組織強化を担当。

私、米田からは、顧客データ活用に関する戦略についてお話しします。戦略的なデータ活用の進め方として、次の3ステップで進めていくのが効果的だと考えます。

STEP1:データ活用で実現したいことを明確化する
STEP2:必要なデータ / システムを定義する
STEP3:活用方法 / PDCAサイクルを具体化

STEP1:データ活用で実現したいことを明確化する

データを活用してビジネスにインパクトを与えるには、まず実現したい目的を明確にすることから始めます。創出したい効果は何かを決めたうえで、必要なデータを移行しシステムを構築することでROIが高まります。

データ活用事例をいくつかご紹介します。

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小松製作所の事例は有名ですのでご存じの方も多いかもしれませんが、建設機械の所在地や車両状態、稼働状況をIoTデバイスで把握し、機械の最適時期の点検を可能にしました。それにともない、フルアクティブな営業活動を実現しましたが、データ活用で実現したいことを明確化しただけでなく、事業戦略と表裏一体の関係にあるデータを取得し、その後のオペレーションまで具体的に作り上げられていたからこそ、成果が出たと考えられます。

ブリヂストンでは「T&DPaaS」と呼ばれる、IoTのセンサーから得られるデータを参考にしたソリューションサービスを実現しました。

STEP2:必要なデータ / システムを定義する

最近はコンサルティング支援の中で「オンラインとオフラインが連携した素晴らしい顧客体験を作りたい」というご相談が増えています。

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そのために、まず顧客が体験する一連のフローを理解し、その中でどのデータを活用しどのようなコミュニケーションを行うかを見極め、具体的に定義することが重要です。一方でデータだけでは読み取れない実際の人の動きを理解することも必要で、顧客への対応や実店舗での顧客行動もあわせて把握することが重要となります。その上で一連の行動と必要な情報を洗い出し、活用データを整理していきます。

STEP3:活用方法 / PDCAサイクルを具体化

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PDCAを回すための分析として、サイト導線分析・チャネル分析・コンテンツ分析・顧客属性別分析と記していますが、どのようなデータを取得し、どのような施策につなげるのかを考えていく必要があります。どのような目的でどのような分析をするのか、創出したい効果から逆算して設計することを、検証プロセスにおいてぜひ取り入れるべきです。

顧客エンゲージメントを高めるデータ管理基盤

<株式会社EVERRISE 取締役 伊藤孝>
ソフトウェア開発会社にてプログラマとしてキャリアをスタート。物流や会計などのプロジェクトに携わった後、2006年に現経営陣とともに株式会社EVERRISEを創業し取締役就任。起業後もアドテク領域で多数のプロジェクトで実績を積み、現在は主にコンサルティング営業を担当。

私、伊藤のパートでは「顧客エンゲージメントを高めるデータ管理基盤」についてお話をします。弊社(株式会社EVERRISE)では、DX(デジタルトランスフォーメーション)の中でも、攻めのDXについてテクノロジーでの支援を行っております。具体的には、データの可視化によるスピーディーで的確な意思決定や、デジタル化による既存商品・既存サービスの提供価値向上、顧客体験観点でのコミュニケーション改善、新たなビジネスモデルの構築などの領域です。

この領域では、システム開発やクラウドのSaaSビジネスを組み合わせるなど、テクノロジーの力が必要不可欠な領域です。弊社では、CDP(カスタマーデータプラットフォーム)を中心に支援をしています。

技術面から見た「データ活用の進め方」

システムを利用してデータ活用を行っていく上での注意点を、技術面からご説明します。

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先ほどのお話にもありました通り「戦略を立てて目的を決める」ことが大前提です。どのような目的でそれをどのように実現するかという戦略立案を立てた後に、社内調整、システム選定、システム導入、実際の運用と改善という流れで進めます。

その際、社内の事業部やチームを横断して進める必要が出てきますが、人手不足やデータ活用のナレッジ不足の問題が発生するケースが多く見受けられます。そのような場合は、コンサルティングファーム・システムベンダー・ツールベンダーに頼るのもひとつの手です。しかしこの時に一番重要なのは、社内のプロジェクトチームがオーナーシップを持って、必要な部分を必要な事業者に依頼する形で進めることです。外部に任せっきりにしないことが、成功の秘訣になります。

大手アパレル企業での推進例

大手アパレル企業様の推進例となりますが、PJオーナーの下に「Biz」と「Dev」というチームを作って推進しました。

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Biz側は、顧客とのコミュニケーションのパーソナライズをどうするか、またどんなコンテンツを作らなければいけないのか、それをどうするのかなど「業務開発・実行支援」の観点からデータの活用が必要です。一方でDev側は、具体的にどのようにデータを管理するのか、顧客とのデジタルタッチポイントをどう創出・維持するのかなど「製品評価・導入開発」の観点で活用する必要があります。

これらはそれぞれ細かくファンクションに分かれており、それらを深く検討し、ひとつのプロジェクトにまとめあげるのが、成功の秘訣です。

社内のメンバーの方はトップマネジメントに集中していただき、各ファンクションは外部に頼るのも、プロジェクトメンバーの体制を整える際の戦略です。例えばコンサルティングはユナイテッド様にご依頼いただいたり、開発やシステムの提供の部分は、EVERRISEにご相談いただければと思います。

技術面から見た「データを活用するために必要な準備」

顧客のデータを活用するには、まず顧客を深く理解することが重要です。どのようなコミュニケーションチャネルを利用し、どのような情報を必要としているのかを企業側が把握しているかが求められます。顧客理解のためにはまず、顧客データを統合することから始めます。

顧客データが統合された状態は、下記の図を参照してください。

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データがきちんと統合されていれば必要な分析ができ、顧客にとって価値のある情報を提供することができます。その顧客にとって最適なタイミングで、メールやプッシュ通知、店頭などの最適な手段を用いてコミュニケーションを行うことで、顧客は良い情報をくれる会社やサービスだと感じ、結果的にカスタマーエンゲージメントにつながります。

例としてECサイトであれば、顧客がお気に入りに登録している商品の「再入荷の通知」や顧客が頻繁に見ている商品の「値引き通知」などは、非常に喜ばれます。またBtoBの対面営業モデルの例では、「顧客カルテ」をつくることで状況を理解でき、不要な電話やメールなどを減らし、必要な時に必要な情報だけを提供できます。

顧客データ統合に必要なシステム

ここからは技術面の話になりますが、データ統合に必要な機能は4つあります。

①DataLake:バラバラに散らばっている顧客データやそのデータに紐づくさまざまなトランザクションデータを貯める箱。

②ETL:RAWデータを加工してDWHに連携するハブ。貯めたデータを使いやすいように加工したり、データの入出力をしたりするために必要です。

③DWH:分析・活用しやすいように構造化したデータを入れる箱。

④Webトラッキング:デジタル行動ログトラッキングツール。お客様とのデジタルタッチポイント、例えばサイト内行動やアプリ内行動、店舗に置いてあるIoT機器にスマートフォンが接触した場合のビーコンの情報を取得するために必要です。

以上4点を基にシステムを組み上げると、顧客データを統合することができます。これらは、AWSやGCPと呼ばれるようなAmazonやGoogle等のクラウドプラットフォームでも単機能で持っています。顧客データの統合基盤に一番使われるのが、GoogleのBigQueryです。

CDPを利用してデータ統合を行う

CDP(カスタマーデータプラットフォーム:Customer Data Platform)とは、企業の顧客に関するデータを管理するための基盤のことです。先ほどご説明いたしました、データ統合を行う上で必要な機能が、CDPには搭載されています。CDPを利用して簡単にデータ統合をできることが最大のメリットで、「業務の効率化」につながります。

CDPを利用するメリットをいくつかご紹介します。データの名寄せやID統合が簡単にできたり、PV数・UU数・セッション数などのサマリーされたデータがあるため、集客処理の一部が実装不要になります。またセグメントの作成機能が管理画面に用意されており、こちらはCDPの中でも最大限に業務効率化できる機能です。まとまったデータから必要なデータを抽出しようとするとSQLを書かなくてはならないため、SQLを習得するか、エンジニアをアサインする必要が出てきます。一方、CDPでは管理画面上で簡単にセグメントを行えるため、SQLの深いの知識のないマーケターでも操作でも行うことができます。

さらに、外部ツール・外部システムとの連携がしやすいこともメリットとして挙げられます。集約し統合したデータを基にBIツールで分析やコミュニケーションツールでの施策実施などが可能です。

CDPを利用しない場合、BIツールやコミュニケーションツールと連携させるには、別途システム開発が必要となるケースが多いため、CDPの利用で開発のコストを抑えることができるというのもメリットの1つです。

データを活用する際にまず始めること「利用できるデータの把握」

データ活用する際にまず始めることは、「データ活用の目的を決める」ことと、「利用できるデータの把握」です。現状持っているデータの中で必要なデータは揃っているのかを整理するところから始めましょう。必要なデータが十分に揃っていない場合は、取得するところから考える必要があります。また、現状のデータから遡って目的を決めることもできます。最初からいきなりツール選定やAI活用を考えるのではなく、まず目的に沿ったデータの現状分析をすることが重要です。データの統合の際にKEYとなる情報があるか否かの確認も行いましょう。KEY情報は一般的にメールアドレスや会員IDや電話番号、氏名・住所・生年月日の三点統合が用いられます。KEY情報をもとに、会員の情報と行動ログや購買情報、お客様から得ている属性のアンケートデータなどを一つに統合することが、データ活用でカスタマーエンゲージを向上させるために必要です。

参加者のみなさまからのご質問

Q.デジタルマーケティングのトレンドや今後の流れとして考えられるもの、今起きている変化はありますか?

米田吉宏(以下、米田):デジタルマーケティングの領域に関わらず「全社俯瞰・バリューチェーン俯瞰でのデジタル活用」はトレンドだと思います。これまでデジタル化は、各領域でそれぞれが閉鎖的に行っていましたが、今後は領域が隔たりなく全社的にデジタルを活用することが、経営の最も大きなアジェンダになってきています。同様にマーケティング領域でも、これまで実店舗などのオフラインのチャネルで販売し取得した情報をオフラインの領域内だけで磨き込むことが主流でしたが、これではDXは進みません。各領域で取得できる情報を共有し、現場の行動まで変革していくことが求められてきます。また、KPI設定も全体を俯瞰したKPIでオフラインもオンラインも見る、というようなトランスフォーメーションが非常に重要です。実際に、弊社ではそのような問い合わせが増えています。

伊藤孝(以下、伊藤):プロジェクトを進めていく上でのトレンドは、補助としての外部リソースの利用です。今までは、プロジェクトマネージャーやプロジェクトリーダーなど先導を担う役割までもコンサル企業やツールベンダーに任せる、悪い表現をすれば外部のリソースに丸投げするような状況が多く見受けられていました。しかし、商品やサービス、顧客や競合について一番理解しているのは社内の方々です。今後は、社内のメンバーでプロジェクトを先導し、足りない部分をツールベンダーやコンサル企業などの外部リソースで補うように利用すると良いでしょう。いきなり全てをインハウス化するのは厳しいので、部分的には外部リソースを使いつつ、インハウスで行える領域を拡大していくのが良いと考えています。

Q.経営企画室で全社マーケットとして戦略を全体で打つことを検討しています。事業部ごとにマーケティング戦略に色があったり、使用しているツールが別になっていたり、全社で統合するとなると、事業部側の協力が得られにくくなっています。事業部側に協力を得られるようにするにはどうすればよいですか?

米田:ポイントは二つあります。一つ目は「各事業部の理解と納得感を得ること」です。まず、各事業部に「全体を統一して実現できること」を説明して理解してもらう必要があります。全社の経営視点と事業部視点は必ずしも一致していませんので、その目標実現に対し事業部に納得感を抱いてもらうことが重要です。例えば全社の統一で見込めるコスト削減の説明をした場合、全社であればコスト削減はイシューですが、各事業部からして見れば売り上げも上がって利益も出しているのに、なぜコスト削減が求められるのか?という根本的な視点の違いによる判断の違いが生まれてしまい、結果協力を得られないという話をよく聞きますので、重要なポイントです。

二つ目は「メリットを明確に伝える」ことです。経営企画やコーポレートと事業部はある種、ブレーキとアクセルの関係である場合が多いかと思います。事業部がやりたいことも全社視点で危険という場合には、経営企画部は止めに入らなくてはいけません。そのようなポジションの方が、従来のやり方を止めて新しい手法で進めていきたいと言った場合、事業部側は受け入れ難い体勢になりがちです。目的とともに「事業を伸ばすために必要であり、実現の先にはこんなメリットがある」ことをしっかりと伝える必要があります。場合によっては数字を用いてコミュニケーションを図ることをおすすめします。

伊藤:技術面においても推奨のツールやデータの使い方が事業部ごとに違う、ということはよくある話です。部署だけでなく子会社やブランド毎、グローバルで見ると国によって異なり、全社で統一をして進めるのは容易ではありません。しかし、一つの目標に対して顧客に一連の体験を提供し、より事業を洗練させていくためには、強い意志のもとで統一したものをインフラとして用意することは重要です。同じインフラで同じデータの見方、使い方をしているだけで共通言語がそろうようになり、統一感が生まれ、協力をしやすい環境になります。

ただ最初にお話しした通り、統一は簡単ではありませんが、乗り越えるための具体的なプロセスのサポートを弊社では行っております。第三者に俯瞰的な目線で見てもらい、隔たりを埋めるために何が必要かを洗い出してもらうのも一つの手法だと思います。

Q.導入したものの使いづらいという事態を避けるシステムを選定するには、どのような基準で考えればよいですか?

伊藤:弊社は、他社様のプロダクトの選定をクライアント様サイドに立って行うケースも多く、評価カテゴリーや評価軸で複数社を比較するということもやります。その際に下記のようなシートを用いて比較を行います。

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その際、システムを使うことにより担保したい項目はなるべく少なく絞り、フォーカスして検証することが重要です。結局システムの全ての機能が使われるというのは稀です。

次にフィーリングやサポート力などを見ていきます。100点満点のツールというのは存在しないため、足りない部分は運用を始めて一部だけ機能を開発したり、どうしてもダメな場合はツールを変えるということも重要です。運用してみて見えてくる必要事項などもあります。

米田:プロダクトについては、カスタマイズすればするほど値段が上がり、世の中で平準化されて汎用的なものになればなるほど安い、という構造があります。例えばSaaSツールのほとんどは、カスタマイズの余地はないがオリジナルで作るよりも圧倒的に安いというように、どこまでそこに本質的なコストをかけるのかを見極めるのも、重要な観点です。あまりコアな価値を生まなそうなのであれば、汎用ツールから始め、不便さや本当に必要な機能などを洗い出し、カスタマイズに切り替えるのも一つの手です。ツールやシステムの選定には「はじめから全部完璧にする」という考えは避けたほうが良いです。

Q.データだけでは測れない顧客の手触り感やミクロな行動履歴を理解するためのプロセスを教えてください。

伊藤:技術面のご支援をしているためシステム運用側の立場からですが、クライアントから運用のフィードバックの中で、全く予想していなかった顧客の行動をデータを見て初めて知るというケースがありました。データはあくまで情報にしか過ぎませんが、データから気づきを得て、その行動の理由を分析し仮説を立てるためには、マーケティング担当者の長年の経験とノウハウが必要になります。立てた仮説に対して一つ一つの施策で検証していくのが良いかもしません。

米田:データはあくまで情報の一つで、強いて言えば文脈の持たない情報です。そのため、データを活用してLTVの向上などを実現させるためには、行間や文脈を埋めていくことが必要になります。そして、この作業は人間が介在する余地だと考えます。データだけを見るのではなく、時には意外な顧客の行動を追体験してみることも必要かもしれません。また、データが理解できなければ、実際に顧客にインタビューをして生の声を聞き、深掘りをすることも顧客の手触りの理解につながることでしょう。

バスケット分析で「ビールを買う人はオムツを一緒に買う」という例がよく使われます。データを見るだけでは、同時に買われることが多いという事実は理解できても、「子どものいる家庭では、母親はかさばる紙おむつの購入を父親に頼み、店に来た父親はついでに缶ビールを購入する」という文脈までは読み取れません。このように、データから読み取れる情報の「文脈」を埋めるために、自らも行動してみるということを忘れないようにしましょう。

Q.販売代理店を通して商品やサービスを販売しているメーカーなど、これまでお客様と直接の接点を持っていなかった企業は、まず何から考えるべきでしょうか?

米田:どのような形であれ、データを活用して「何を実現したいか」を明確にすることが重要です。

例えば、データから顧客インサイトを抽出して商品開発に活かしたい。または、販売代理店との連携を強化して売り上げを伸ばしたい。この場合は、メーカー側で取得した見込み顧客の情報を販売代理店に共有し、販売代理店はそのデータをもとに行った営業活動の結果をフィードバックしてもらうことでサイクルができ、関係の強化につながるでしょう。他には、新しい事業として販売代理店を通さず直接、顧客に販売できるBtoCの業態を作りたいなど。よく相談を受けるお話は、主にこの3つです。いずれにせよ、データを活用して”何を実現したいのか“を整理することです。

伊藤:目的が決まっている前提で、技術的な面からお話ししますと、まず「必要なデータを集められる状態を作る」ところから始めましょう。直接顧客との接点がないビジネススタイルでも、自社で登録制のブランドのファンサイトを運営していたり、アンケートを実施していたりすると、必要な顧客データを既に持っているというケースは多いです。また自動車メーカーなどでは、実際の走行距離などの商品やサービス利用に関する顧客データも取得することができます。販売経路が販売代理店を使用しているため顧客と直接的な接点がないように見えますが、顧客データを全く取得していないというケースは少ないです。まず、自社のデータを確認し、どんなデータがどこまでそろっていてどんな情報が足りないのか整理しましょう。足りない情報を補うために必要に応じて施策を行ったり、代理店にデータの提供を依頼することも重要です。必要なデータがある程度集められたら、CDPなどを使用して統合し、目的に応じてデータ活用を行っていきましょう。