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【FABRIC TOKYO×ユナイテッド】
OMOの要諦はバリューチェーンの垣根を壊し
顧客をディテールまで理解すること

対談

新型コロナウイルスの影響で、厳しい状況に追い込まれている業界の1つがアパレル業界です。デジタル化の遅れにより、閉業を余儀なくされるアパレルブランドが後を絶ちません。そのようななか、D2Cブランドとして健闘を続けているのが、オーダーメイドスーツブランドを手掛けるFABRIC TOKYOです。

今回は、株式会社FABRIC TOKYO 森 雄一郎氏にD2Cブランドとしての戦略や組織論についてお話を伺いました。また当社の執行役員 米田 吉宏と、FABRIC TOKYOとユナイテッドが業務連携をした経緯や今後の展望をお伺いしました。

FABRIC TOKYO流、D2Cブランドとしての戦略

FABRIC TOKYOは店舗でサイズを測定した後、高機能素材のオーダースーツやオーダーシャツをオンラインから注文できるサービスを展開しています。「Fit Your Life」というコンセプトを掲げ、日本を代表するD2Cブランド企業として多くの消費者に独自の価値を提供しています。

2020年10月にユナイテッド株式会社と株式会社FABRIC TOKYOは業務提携いたしました。

ユナイテッドのDXプラットフォーム事業とFABRIC TOKYOのブランド立ち上げのノウハウを掛け合わせることで、新たな消費者価値を創造し、顧客ビジネスモデルを刷新するようなD2Cブランド構築を進めております。

参考URL:https://united.jp/news/release/20201023dx_platform.html

米田:他のD2Cブランドとの差別化や競合優位性を取るための戦略があれば教えてください。

森:競合を意識しないってことになるかと思います。自分たちが顧客に何を提供できるかを突き詰めて、サービスを磨き続けていますので、あまり競合とどう差別化するは考えてこなかったですね。逆に、それがあったために「オーダーメイドスーツといえば、FABRIC TOKYO」のようなブランディングができたかと思います。

米田:逆に参考にした企業はありますか。

森:Appleは参考にしました。Appleは基本的にはオンラインでマーケティングをし、店舗も持っていて、そこで実際に商品を手に手に取り、試すことができるOMO型ビジネスを取っています。ブランドと身近な顧客体験をリアルでできるところを非常に参考にしています。

コロナ禍でのアパレルの経営方針は、2極化してきていると思っています。ZOZOやユニクロのようなインターネットを上手く活用しながら、顧客体験や商品を届けている企業がある一方で、時代の変化の波にのれない企業に関しては、顧客に選ばれない時代になっていると思います。ですので、アパレルで伸びているところを参考にしているというよりは、他のデジタルを取り入れて成長をしている企業を参考にすることが多いですね。

戦略その1:  さまざまな部署を経験させることによりDX人材を育成する

米田:ありがとうございます。業務提携したなかで組織づくりもぜひ一緒にやっていきたいと思っています。オンラインとオフラインで分かれて、収支やKPIを統合的に管理することができるような人材を育成する方法論があればお伺いしたいです。

森:DX人材を育てることに注力しています。私たちが取り組んでいることとしては頻繁に部署異動をさせることです。サプライチェーンにいた者がマーケティングに異動したり、店舗販売の者がプロジェクトマネージャーをやったり、部署横断型の組織を作っています。1年その部署にいたら、手を上げれば異動志願ができる社内転職制度も設けていて、人材を動かし、さまざまな経験をしてもらい育成しています。

米田:すごいですね。サプライチェーンとオンライン、オフラインを統合したカスタマージャーニーを理解したうえで、各自の専門性をつけていこうという方針なのですね。

森:おっしゃる通りです。例えば、新しい機能を作ろうとなっても、プロダクトマネージャーや、マーケティングやPR担当がサプライチェーンを理解していないと、上手く回らず社内に軋轢が生まれてしまう懸念があります。まず他部署の機能を理解したうえで、自分の得意領域の専門性を高められる人材の育成を重要視しています。

既存産業を持つ大手企業は、オンラインでのカスタマージャーニーの理解が乏しい傾向にあります。全て外部のコンサルティングに丸投げだと社内にノウハウがたまっていかず、本質的な企業の強みになっていかないと思っています。初めは外部のプロフェッショナルを活用しつつも、その知見を持った人材を育てていく必要があると思います。どのように社内で知見をためていくかは、既存産業を持つ大手企業がオンラインシフトするなかで1番ボトルネックになると思います。

米田:私もコンサルティングをしているなかで、オンライン、オフラインの垣根を超えてさまざまなデータを統合的に俯瞰してみていけるような人材はなかなかいないですね。結局手の届かないところは外部に頼んでしまい、ナレッジの蓄積ができないようなクライアントは多いかなと感じます。

D2Cブランドのみならず、マーケティング領域全体に言えることだと思いますが、多様な顧客設定をするなかで全体をどのように連関させて、戦略的に動かしていくかは肝になってくると思っています。

森:全てがIDにひもづく時代になっていると思っています。その結果社内でも情報爆発が起こっていて、いい意味でも悪い意味でも今まで見えなかったデータが見え始めています。それをどう活用していくかだと思うのですが、データが多い分やることがタスクとして積みあがってしまって、現場が逼迫して人材が疲弊していくのは懸念点になると思っています。

米田:そうですよね。御社でデータを活用しながらどれだけ顧客を理解をしているか事例についても深ぼりしていきたいです。

戦略その2: データを用いて顧客をディテールまで理解する

森:私たちは、ディテールまで理解しています。オンラインとオフラインを持つ強みとして、顧客の解像度が高まることだと思っています。

オンラインで得られる情報には限度があると思っていて、リアル店舗でのお客様の情報は非常に重要で、オンラインでは取ることのできないデータだと思っています。私たちはリアルな場でのお客様の情報をデータベースに書き込んでいます。接客をするなかで出た課題やニーズを顧客のIDとひもづける形で保存をしています。現場の声から商品開発に生かした例があるのでご紹介します。昨今はビジネスシーンにおいてもカジュアル化が進んでおり、ビジネスマンのリュックサック利用が増えてきました。その際に、スーツやシャツにしわが出来てしまい、物持ちが悪くなってしまう課題が出ました。そこで私たちは、コンバットウールという強靭な素材を使って、ダメージが少なくしわになりづらいようなスーツを開発しました。

このように現場から出た課題を解決することによりヒット商品が生まれました。

米田:そうなのですね。先ほどのお話にもあったように、従業員の方はサプライチェーンもカスタマージャーニーも理解しているので、現場の声が商品開発に活きるということを共通認識として持っているように感じました。

森:ここも肝だと思っていて、データをどこまで活用するかは、個人の見解だけでは判断が難しいと思っています。弊社では洋服を販売する会社ではなく、お客様に新しい顧客体験とブランド体験を作っている会社というカルチャーを徹底的に浸透させています。それを実現できるのは”リアル”と”IT”の双方を深く理解しているからできることであって、それを意識してもらうように働きかけています。

米田:私もそれはすごく大事なことだと思いますね。プランを立てるだけではなく、それがワークする組織がどういう状態で、実際どう作っていくかが重要だと思っています。FABRIC TOKYOさんとユナイテッドがタッグを組むことによって実現できると思っています。

FABRIC TOKYOとユナイテッドで業務提携によって、実現したいこと

森:ぜひよろしくお願いいたします。われわれはこのD2Cモデルを7年前ほどからやっていて、ノウハウはたまってきている認識でいます。ただ、まだまだ世の中に与えられるインパクトは小さいと思っているので、われわれのノウハウが生かされて特に小売業界やアパレル業界に良い影響を与えたいです。

小売は人々を幸せにする産業だと思っています。しかし現在、小売業は傷んでいます。誰かを幸せにしているモノが小売の現場から無くなってしまわないためにも、デジタル化は非常に重要です。小売業のDXによって社会によりインパクトを与えていきたいと思っています。それをユナイテッドさんと一緒に実現していきたいと思っています。

米田:ありがとうございます。ユナイテッドとしても、戦略やオペレーションにデジタルの力を組み込んでポテンシャルを開花させることが、クライアントに提供できる価値だと思っています。その際に、プランも必須だとは思いますが、やはりバリューチェーンがデジタルによって垣根が無くなっていくなかで、それを運用できてPDCAを回せるような状態に持っていかないと勝てません。実際そのような運営を行っているFABRIC TOKYOさんと一緒にやっていくことが一番補完関係として良いと思っているので、お互いの強みを生かしながらクライアントにさらなる価値を提供していきたいと思っています。

森:はい、とても楽しみにしています。