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エンタメ業界のデジタルトランスフォーメーション

ウェビナー報告

今回は、ユナイテッド株式会社が主催したウェビナー「エンタメ業界のデジタルトランスフォーメーション」のレポートをお届けします。
第一部では、エンタメ業界のデジタルトランスフォーメーション(以降、DX)化について、エイベックス・ビジネス・ディベロップメント株式会社 代表取締役社長の加藤信介氏、フォッグ株式会社 代表取締役 CEOの関根佑介氏にそれぞれお話いただき、第二部では、ユナイテッド株式会社 執行役員 事業戦略担当の米田 吉宏を交えた三者によるパネルディスカッションを行いました。

米田 吉宏(以下、米田):初めにエイベックスのご紹介をお願いいたします。

加藤 信介氏(以下加藤):エイベックスは、音楽を中心とした様々な事業を展開する総合エンターテインメント企業です。私が代表を務めるエイベックス・ビジネス・ディベロップメント株式会社では、エイベックスのアセットを活用しながらも、既存の形に捉われず新規事業開発と新規事業に関わる投資を行って、’これから’に合ったエンターテインメント事業群を作る挑戦をしています。


【エイベックス・ビジネス・ディベロップメント株式会社 代表取締役社長 加藤 信介】
2004年エイベックス株式会社入社。入社後は営業・販売促進・アーティストマネジメントと音楽事業に長く携わり、2016年に社長室へ異動。社長室部長として、構造改革や新規プロジェクトに参画。
2017年よりグループ執行役員として戦略人事・グループ広報・マーケティングアナリティクス・デジタル R&D を担当。2018年に新事業開発・戦略投資機能を立ち上げ、2020年同領域を子会社化。(エイベックス・ビジ ネス・ディベロップメント株式会社)

テクノロジーがエンターテインメントにもたらした変化

テクノロジーの変化や価値観の変化によって、エンターテインメントを取り巻く環境は大きく変わっています。
テクノロジーの進化に伴って、今までにない新しいエンタメを作れる可能性がどんどん出てきているだけではなく、既存エンタメの価値再構築やアップデートが起きています。

またメディアの変化によってもみんなが同じものに憧れる状態から、「僕はこれが好きです」というそれぞれが好きなものや、自分に合ったものを選ぶという”多様化”、”パーソナライズ化”がどんどん進んでいっていると思います。

アーティストやタレントにおいても、ごく少数のスーパースターに加えて、多数の特定セグメントの人気者が同じように活躍できる場が広がっています。昔は一部のスーパースターだけに注目が集まっていましたが、今は発信できるメディアや、SNSも多様化しています。スーパースター以外に、YouTuberやライバー、インフルエンサー、場合によっては一部の経営者がアーティスト以上の影響力を持つことが受け入れられる社会になっています。昔は”カリスマ”、”憧れ”というところからファン形成につながったと思うのですが、今は”共感”、”親近感”というのも、非常に大事なファクターになりますね。
マネタイズ自体も限定的だったものが、クラウドファンディングやデジタルファンクラブ、ギフティングなど多様化しています。

ここに挙げたものは一例であって、とにかく、全てのものを「過去」から見るか「今」から見るかで、本質的に作り出すべきサービスや事業が全く異なると思っています。
そのことから、同じセグメントでも以前の事業に加えて、今のマーケットや価値観にフィットする事業群を、もう一層作り出せる可能性があります。
そのために、一旦既存事業と離れた箱を作って、そのなかで新しいエンターテインメント事業群を作って、最終的にはグループ全体の事業ポートフォリオの強化と価値創出に繋げる、そんな挑戦を行っています。

新規事業を立ち上げる際のユーザーファーストの視点と組織論

今まで私が新規事業創出に取り組んできたなかで、大事にしていることを2つお話しします。
まず1つ目に、技術ファーストではなく、”ニーズ”や”ユーザーファースト”を大事にしています。
これから生まれるものが全てデジタルなものである必要もなくて、さらにユーザーに価値があるものなら、”アナログ”や”リアル”なものでも全然いいという目線を持つことも大事だと思っています。

2つ目に、組織論なのですが、私の経験からしても、新規事業の組織は維持継続するのが大変難しいので、マネジメントをするにあたって「自分と自分の組織の能力を見極める」ことを大事にしています。自分たちの強みをベースにしてポートフォリオマネジメントをするということは、とても大事なことです。

組織としてノウハウを貯めて、そのなかで段階的に人を引き抜いたり、いけると思ったら、新しい領域の事業開発に飛び込んでいくポートフォリオを組みながら、組織マネジメントをしていく必要があります。
このような考えの元、僕は事業のDXに取り組んでいます。

【フォッグ株式会社 代表取締役 CEO 関根 佑介氏】

米田:最初にフォッグのご紹介をお願いいたします。

関根 佑介氏(以下関根):フォッグは2012年に設立された会社で、「CHEERZ」というサービスを運営しています。「CHEERZ」は、アーティストをオンライン上で応援する、新しいファンクラブの形です。他にも、最近では映画の制作者の支援プラットフォームや「Exam」というオーディション管理ツールを立ち上げ、新しいエンターテインメントのあり方を提案しています。

【フォッグ株式会社 代表取締役 CEO 関根 佑介】
複数のWebやアプリケーションサービスの企画・立案を担当し、携わったアプリの累計ダウンロード数は6,000万以上。これからの「あたりまえ」になるプラットフォームを立ち上げるためにフォッグを設立し、代表取締役に就任。
ユナイテッド独自の新規事業プログラム「U-PRODUCE」の起案者であり、制度全体のプロデューサーも兼任している。

withコロナ、afterコロナにおけるプラットフォーマーから見たエンタメ業界の課題

新型コロナウイルス感染症の流行で、みんなが一斉に今までの環境からの変化が求められました。そのようななかで、オンラインに元々どっぷり浸かっていた若い世代と、オンラインに疎い世代とのギャップが生まれてしまっているのが今の状況です。
オンライン世代とオフライン世代がどうやって共存していくかを考えながらサービスを作っていきたいと思っています。

新型コロナウイルス感染症の関係で、オンライン上のタッチポイントはすごく増えている一方、エンタメ市場規模は、1兆円から現在5,000億円まで下がっています。
なぜそこまで下がってしまったかというと、オフラインの依存度が高いことが起因しています。エンタメ業界ではオフラインの割合が8~9割に対して、オンラインは1割ほどと言われています。そこに対して「オンラインシフト化」していかなければならないですし、今後それに伴って、場所よりは回線や他サービスとの連携が求められるようになっていくのかなと思っています。

オンライン世代とオフライン世代が共存できるコミュニティ形成とは

オンラインという見えない距離があるなかで、今後どうやってファンを作っていくか、ファンコミュニティを形成していくかは最も重要な要素です。
コアファンになるまでに、大きく分けると5ステップくらいあり、そのステップを上げていくためにプロモーションやコンテンツ力、コミュニケーション力が必要だと言われています。


プラットフォーマーとしては、このステップをしっかり作れる仕組みを網羅的に用意しないと今後は生き残っていけないと思いますね。
Web周りでは、ファン形成をしっかり作れる仕組み作りをやっていかないと、一時的に盛り上がったとしても最終的には廃れるプラットフォームになってしまうと考えています。
コミュニティ形成をするにあたって「共有・共鳴・共感」はすごく大事で、固定概念に捉われることなく、変化し、共存することができれば、今後いいサービスが出てくるのかなと思っています。

三者によるパネルディスカッション

オンラインシフト化よってアーティストはどのように活動を変えていく必要があるか

米田:直近のコロナ禍によって様々なプラットフォームを利用するユーザーが増えて、オフラインからオンラインにシフトし、マーケットや環境が変わっていくなかで、アーティストの方々はどのように活動を変えていく必要があるでしょうか。

加藤:今のコロナ禍の状況であるなしに関わらず、活躍できるアーティストのスキルと才能がそもそも変わってくるのではないかと思っています。新しいサービスを上手く使いこなして、自分の才能を発揮することができるアーティストと、そうではないアーティストがいると思いますが、みんなが同じやり方を目指す必要はなくて、そのやり方も本人に合ったもので多様化していくと解釈しています

熱狂を生むことのできるアーティストとそうでないアーティストの違いは

米田:熱狂を生んでいくアーティストとそうではないアーティストがいらっしゃると思うのですが、その違いは何ですか。

関根:Web上だとユーザーはなかなかインタラクティブ性を体験しづらいと思っています。例えば、Twitterでコメントが返ってきたり、ライブ配信でコメントを読みあげてくれるという体験がすごく重要で、そのコミュニケーションを行う人と、一切行わない人だと前者の方が伸びやすいと思います。
みんなが無理にやる必要はないかと思いますが、ネット上のコミュニケーションを上手く使いこなせる人が熱狂を生むアーティストになれるのではないでしょうか。

変革の必要性をトップに認識してもらうためには

米田:変革の必要性を現場で働いている方々からトップの方々に認識してもらうために、何かコツや働きかけられることがあれば教えていただきたいです。

加藤:分かりやすいのは一個、ファクトを作ることだと思います。どれだけDXが素晴らしいかということを抽象的に説明しても、本質的な必要性は伝わらないと思うので、事例を作ってしまって提示することはすごく効果的だと思います。
そういった実例が作れない場合は、身近な会社の事例をファクトとして伝えることが大事かなと思います。いずれにしてもリアリティを持たせることが大事であって、ファクトを作るないしは、ファクトを伝えることが大事だと考えます。

オンラインでのコミュニティ形成方法、気を付けたいポイント

米田:コミュニティを形成した先に、そのコミュニティをどう活用するか展望はありますか?

関根:コアファンが1人や2人いれば簡単にファンクラブが作れてしまう時代なので、どちらかというとメリット目的ではなく、この人を応援したいからファンクラブに入っているんだという仕組み作りになっていくと思います。旧来のファンクラブのみでやっていたら満足度は低いのではないかと思っています。スタートはそれでいいけれど、これからのアーティストは、ファンと対等な立場であるコミュニティ形成ができないと、ファンは増えていかないと思いますね。

これからの会社、組織の理想形とは

関根:組織を変えたければ、変えてくれる人のところに行けばいいと思いますけどね。
この時代で長く会社にいなきゃいけないという考え方も会社のエゴだと思うので、いたい会社を作ることが大事だと思います。

加藤:アナログの会社だったとして、現場からボトムアップでトップの価値観まで変えることってすごくカロリーがかかることだと思います。デジタルシフトした会社にしたいのであればずっとそこにいても効率が悪いので別の会社に行っていいと思います。

米田:そうですね。今後会社はデジタルの重要性を認識した上で戦略を立てないといけないと思います。会社を変える意思を持っているのであれば、経営層に提案する、というチャレンジはしてもよいと思います。響かない場合悩ましいですが・・・。

関連して、視聴者さんから「大きい組織が、そこまで大きい組織として残っている必要があるのか?」という質問がきているのですが、どのようにお考えでしょうか。

加藤:会社とは分散と集中を繰り返すものだと思うのですが、この先エイベックスのような大きな会社はレバレッジが効くことも含めて必要だとは思っています。ただピラミッド化している組織である場合は意味がないと思っていて、今後の時代に即した形で上手くカルチャーやKPIが混ざらないように各領域が一定分散しながらも、その集合体で1つの会社が成り立っていることが理想の会社の形であると思っています。